STEM教育とは?目的やプログラミング教育との関係性は何?STEAM教育との違いや家庭でできるSTEM教育も要チェック!

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近年、教育の中でも技術や工学といった理工系の学問が重視されており、世界中で「STEM教育」(ステム教育)の実践が進められてきました。

日本でも2020年度から小学校でプログラミング教育が導入されたことで「STEM教育」に対する注目度が高くなっています。

そこで今回は、STEM教育の概要や目的、日本におけるSTEM教育の取り組み、STEM教育に芸術(Art)を加えた「STEAM教育」についても紹介します。

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目次

STEM教育とは?

STEM教育とは

STEMとは、Science(サイエンス・科学)、Technology(テクノロジー・技術)、Engineering(エンジニアリング・工学)、Mathematics(マスマティックス・数学)の頭文字をとって造られた造語です。

STEM教育は科学・技術・工学・数学の4つの学問分野を柱としていますが、単にそれぞれの分野を学ぶのではありません。

日本STEM教育学会の新井氏は、「これまでのSTEM教育と今後の展望」(2018)で、STEM教育とは何かについて次のように説明しています。

科学,技術,工学,数学などの知識や技能を基にして,科学技術的なアプローチによって現実の課題を論旨明確に考え,創造的に解決する問題解決のためのプロジェクト型の学習である

つまり、STEM教育は理工系科目に特化して学ぶというわけではなく、その知識や方法を使って学問の分野を超えた課題解決を重視しています

学・技術・工学・数学の視点から、課題を解決するためには何が必要でどうすればいいのかを論理的・創造的に組み立てていく、より現実社会に役立つ教育手法なのです。

STEM教育の歴史は割と浅く、2000年代にアメリカで始まりました。

現在では、オーストラリアやカナダ、ベトナム、香港などを中心に世界中で実践されています。

STEM教育の目的は?

では、一体なぜ世界中でSTEM教育が注目されているのでしょうか。

端的に言うなら、STEM教育を取り入れることは、将来的に子どもの活躍の場を広げることに繋がるからです。

STEM教育の目的について確認しておきます。

世界で通用するような幅広い分野で活躍できる人材を育てること

IT化が急速に進む現代社会では、科学技術は欠かすことはできません。

今や生活や仕事をしていくなかで、スマートフォンやパソコン、インターネットなど科学技術なしでは支障が出るという人がほとんどでしょう。

例えば、iPhoneが登場したのは2008年ですが、それからたった10年ほどで私たちの生活は様変わりしましたよね。

AI(人工知能)の研究が進められている現在、科学技術はより発展し、私たちの生活や仕事は今後も急激に変化していくことが予想されています。

まず、AIの登場によって2030年までには就業構造が変わり、定型的な業務は減っていく一方で、労働者はより創造的な能力が求められるように変化します。

さらに貧富の格差や環境問題などが深刻となり、国境や分野を超えた社会課題も山積みです。

つまり、これからの社会を生き抜くためには、こういった社会の変化課題を見据えたうえで、世界で通用するような幅広い分野で活躍できる人材を育てることが必要とされています。

STEM教育に取り組むことで、様々な知識をもとに課題解決に取り組めることが大切になってくるわけです。

少子高齢社会に対応するには子どもの資質や能力の育成が必要になる

今後人手不足が進む日本では、特に人材育成が重要課題となっています。

日本では少子高齢化が進み、2060年には65才以上の人口が40%近くにもなる(※)と言われています。

※参考:財務省「参考資料・日本の少子高齢化はどのように進んでいるのか

働ける人口が減っていく社会では、一人一人の労働の負担が増えていくことになりますね。

人手不足や労働者の負担を減らすために、機械化やIT化もより一層進んでいき、今の子どもたちが大人になる頃には、よりIT化された社会の中で働くことになるでしょう。

IT化され急速に変化していく社会に対応するためには、STEM教育を通して子どもたちの個々の能力や資質を最大限に高めていく必要があります。

STEM教育が世界で広まった背景は?

このように、STEM教育はこれから社会で活躍していく人材を育てるためには欠かせない教育手法と言えそうです。

実際、2000年代に入ってからというもの、未来を見据えて世界各国が急速にSTEM教育に力を入れ出しました。

今や世界で重要視れているSTEM教育は、どのように広がったのでしょうか。

オバマ大統領が一般教書演説で科学の重要性を取り上げたのがきっかけ

STEM教育に世界中が注目するきっかけとなったのが、 2010年オバマ大統領の演説です。

オバマ大統領は、STEM教育をアメリカのイノベーション戦略の柱としました。

国を挙げて、情報技術やサイバーセキュリティを学ぶ大学院生を奨学金で支援するなど、STEM分野で将来活躍が期待される人材の育成に力を注ぎました。

実際にアメリカでは、2010年以降の理工系分野での博士号取得者数が急激に増加しています。

その結果、現在に至っては大学だけではなく、企業でも研究分野で活躍する人材も増えているそうです。

参考:文部科学省「研究人材の育成・確保を巡る現状と課題」(2018年)

海外におけるSTEM教育の取り組み事例

STEM教育に力を入れているのはアメリカだけではありません。

中国ではSTEM教育を国家的戦略として注力。海外にいる優秀な若手研究者の帰国を促したり、優秀な学生に海外留学をさせたりして国内の研究者を育成しています。

また、イギリスではSTEM分野の人材を増やすため大学等に博士トレーニングセンターを設置

士課程の学生が企業と連携しながらトレーニングできる奨学金プログラムをつくりました。

このように、世界のあらゆる国が、国を挙げてSTEM人材の育成に取り組んでいます。

参考:文部科学省「研究人材の育成・確保を巡る現状と課題」(2018年)

日本ではSTEM教育の一環としてプログラミング教育を導入

STEM教育とプログラミング教育

世界でSTEM教育に対する政策が進められていまうが、日本でのSTEM教育は進んでいるのでしょうか。

現状ではアメリカや中国には少し遅れをとっているものの、科学や工学分野での人材を育成していこうと、STEM教育を公教育に導入する動きは始まっています。

その一つとして取り入れられたのが、プログラミング教育です。

2020年からプログラミング教育が必修化された

2020年度から小学校で始まったプログラミング教育は、下記の3つを目的としています。

1.「プログラミング的思考」を育むこと
2.プログラムの動きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報術によって支えられていることなどに気づくことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、より良い社会を築いたりしようとする態度を育むこと
3.各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること

(引用:「小学校プログラミング教育必修化に向けて」(未来の学びコンソーシアム作成)

一番最初の目的にある「プログラミング的思考」とは、一体何でしょうか。聞きなれない言葉ですね。

「プログラミング的思考」について、文部科学省は次のように説明しています。

自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力

(引用:文部科学省「小学校プログラミング教育の趣旨と計画的な準備の必要性について」)

つまり、プログラミング的思考とは、目標に向かって自分で道筋を立てて考え、実現させていく力です。

実際にプログラミングが組めることを目指しているのではなく、プログラミングを通じて考える力を育み、目の前にある課題を解決できる人材育成を目指しているのです

ワークショップやプログラミングツール、ゲームを通して論理的思考を育む

では、プログラミング教育とSTEM教育はどのような関係があるのでしょうか。

プログラミング教育は、ワークショップやゲームなどのアクティブラーニングをしながら論理的思考を育んでいきます

例えば「コンピュータを使って正三角形を描こう」という課題があったとしましょう。

その場合、正三角形とは何かを数学的な面で理解した上で、どんな動きが必要で、どんな動作を、どのように組み合わせてコンピュータに指令を出すのかを考えることになります。

最初からうまくいかないことも多く、試行錯誤を繰り返しながら学んでいくことになりそうです。

このプログラムを組むには、数学的な正三角形についての知識だけでなく、技術・工学的なコンピュータの操作に関する知識が欠かせません。

このようにプログラミング教育は、学問を超えて横断的に学びながら課題を解決していくSTEM教育そのものというわけです。

幼児期から家庭でもSTEM教育に取り組むには?

子どもに論理的思考が身に付き始めるのは、小学校中学年くらいから。

就学前の子どもにとっては、物事を論理的に考えるにはちょっと早いかもしれません。

ただ、難しいことでなければ、就学前の子どもでもSTEM教育に取り組むことができます

例えば、LEGO(レゴ)などのブロックで遊ぶことや、料理をすることもSTEM教育の一つです。

「崩れないようにブロックを積むこと」で目標の達成に向けて最初の段階で何が必要だったのかを考えることができますし、「順番をつけて調理をすること」で物事を細分化しながら考えることに結び付けられます。

また、タブレットを使えば、「Scratch(スクラッチ)」などのビジュアルプログラミング言語を学ぶことも可能です。

プログラミング的思考を育めるような、無料で楽しめるアプリやソフトはいくつもありますので、ダウンロードしてみると良いでしょう。

最近では「STEAM教育」も注目されている

STEM教育をより発展させた教育手法に、STEAM教育(スティーム教育)があります。

似ている言葉ですが、STEM教育とは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

STEAM教育の特徴や必要性についてご紹介します。

STEAM教育の「A」はアートのこと

芸術要素のあるSTEAM教育

STEAM教育は、STEMの科学・技術・工学・数学にArt(アート・芸術)を足したものです。

理工系の分野は法則に則っている学問ゆえに、何か課題を解決しようとしたときに一つの解決策が導かれることが多くなりがちです。

一方で芸術分野では個人の主観や価値観が優先されることが多く、人それぞれに異なる視点が重視されます。

STEM教育に芸術的要素が加わることでで、よりクリエイティブな発想や解決策が生み出されるということで、STEAM教育は注目されています。

AIが苦手とされるクリエイティブな能力を引き出すことが大切

今後、人に代わってAIができることが増えていくことが予想されていますね。実際に単純作業や定型業務はすでにAIが担っていることも少なくありません。

2015年に発表された野村総合研究所の試算によると、10~20年後に日本の労働人口のうち49%は人工知能やロボットに代替される可能性があるそうです。

一般事務員や受付係、タクシーの運転手や機械のオペレーターなど幅広い職種が将来的に無くなる、または減少していく一方で、複雑な問題解決力ややクリティカル思考・想像力を要する仕事に関しては、代替の可能性が低いとされています。

例えば、デザイナーやカウンセラー、商品開発部員などです。

個人の考えや価値観によって生まれるクリエイティブな能力は、AIが人に勝ることはできないと考えられているためです。

ただ、AIによって味を分析したビールが発売されたり、AIの描いた絵が発表されたりと、そんな分野であえも脅かされつつあります。

それでもこれからの社会で活躍していくには、個々のもつクリエイティブな力を引き出し活かしていくことが重要です。その人材を育成するために、STEAM教育はより重視されていくでしょう。

STEM教育やSTEAM教育を通して子どもの能力を高めよう

日本や世界で行われているSTEM教育の現状や広がった背景、STEAM教育の取り組みなどについて紹介してきました。

日本でSTEM教育が注目されるようになったのはごく最近で、教育手法の一つとして現場に少しずつ浸透してきている段階です。

先ほど触れた通り、STEM教育は家庭でも取り組むことができますし、プログラミング教室によっては力を入れているところもあります。

STEM教育やSTEAM教育のやり方を生活の中で意識していけば、論理的思考や課題解決能力を育んだり、子どもの将来の選択肢を広げたりすることに繋がるはずです。

ブロック遊びやプログラミングなどをツールにしながら、子どもの能力を引き出し、高めていきましょう。

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