子どもの集中力が続かないと思うことはありませんか。楽しいはずの遊びでも、すぐ気が散ってしまう子どもは少なくありません。
子どもの集中力が続かない原因は様々です。
やる気がないだけと思っていても、実際は脳や体調が整っていない可能性もあります。
そこで今回は、子どもの集中力が続かない原因と、ご家庭でできる対応方法について解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
子どもの集中力が続かない原因は?
子どもの集中力が続かない原因は、毎日の生活の中にあります。
いくつか考えられる原因を挙げました。当てはまっているものがあれば要注意です。
- スマホやゲームの時間が長くて脳が疲れるから
- おもちゃやテレビなど周りに刺激が多いから
- 体に椅子が合っていないから
- しっかりとした食事や睡眠を取れていないから
- 勉強に興味がなく、させられている感をもっているから
一つずつ見ていきましょう。
スマホやゲームの時間が長くて脳が疲れるから
計の時刻やお釣りの計算などができる「脳トレ」(※)と呼ばれるゲームを聞いたことはないでしょうか。(※「脳を鍛える大人のDSトレーニング」や「脳を鍛える大人のNintendo swichトレーニング」)
普段はゲームに馴染みのない大人や高齢者も、脳の活性化にいいと大人気のゲームです。
そのゲームを監修した東北大学の川島 隆太教授が、仙台市の教育委員会が主催した「学習意欲の科学的研究フォーラム」で基調講演を行ったことがあります。
川島教授は、仙台市の標準学力調査と、生活・学習状況調査の結果から明らかになったことや自信の研究から、子どもとスマホの関係性について次のような話をしました。
- スマホを使う時間が長くなれば長くなるほど、成績が悪くなる
- 学校で勉強したものがスマホを使ったことにより、勉強した中身が脳から消える
- 使い続けることで低い成績がどんどん低くなる
- スマホを使う「ながら勉強」はいいことがない
(引用:学習意欲の科学研究フォーラムより一部使用)
つまり、せっかく勉強しても、スマホを長時間利用すると学んだ内容が定着しないと川島教授は指摘しています。
さらに、川島教授らの研究グループは、長時間のテレビゲームプレイと脳の発達への影響について次のことを発表しています。
長時間のビデオゲームプレイが、脳の前頭前皮質、海馬、基底核といった高次認知機能や記憶、意欲に関わる領域の発達性変化や言語性知能に対する影響に関連している
すなわち、長時間のゲームプレイは記憶だけでなく、意欲や言語発達にまで影響を与えるということです。
これらの研究からは、スマホやゲームは子どもの脳の発達を妨げ、記憶や意欲をつかさどる部分にまで影響を与える可能性があることがよく分かります。
スマホやゲームで脳が疲れ、「覚えられない」「やる気が出ない」状態では、子どもの集中力が続かなくなるのも当然です。
スマホやゲームの利用は使う時間を決めておくなど、家庭内でのルールをしっかり決めておくことが大切ですね。
おもちゃやテレビなど周りに刺激が多いから
いくつもおもちゃを引っ張り出しては途中で投げ出したり、勉強中に遊び出してしまったりする時は、子どものいる環境に目を向けてみましょう。
見えるところに、おもちゃやテレビ、スマホ、ゲーム機といった子どもの興味が湧くものは置いていませんか。
子どもの相手をする余裕がなくてスマホやタブレットで動画を見せているなんて場合は、目に入った途端に気持ちが動画に行ってしまうはずです。
刺激が多ければ多いほど、集中して遊びや学習を続けることは難しくなります。
体に椅子が合っていないから
体に椅子が合っていないと、正しい姿勢が保てず猫背になりやすいです。
猫背は呼吸が浅くさせ、血流の流れを低下させます。
脳へ十分な酸素が行き届かなければ、集中力が欠ける原因になりかねません。
保育園や幼稚園でも、食事をする時は両足がしっかりつくように椅子や台を調整するそうです。
子どもは成長も早いので、正しい姿勢を続けられているか定期的に確認し、椅子の高さや台を調整するようにしましょう。
しっかりとした食事や睡眠を取れていないから
栄養バランスの良い食事をとらないと、脳への栄養が足りなくなります。
子どものうちは好き嫌いも多く、バランス良く食べるのは難しいかもしれません。
ただ、あまりに偏った食事をとっていると、疲れやすくなったり、注意力が散漫になったりすることがあります。
食事だけではなく、睡眠不足も集中力に大きく影響します。昼寝時間も少なく、大人と同じように夜遅くまで起きている場合は要注意です。
勉強に興味がなく、させられている感をもっているから
子どもは遊ぶことで心身ともに発達します。大人からするともう十分なくらい遊んだと思っても、まだまだ遊び足りないなんてことは日常茶飯事です。
そんな遊び盛りの子どもに勉強を押し付けたところで、本人が楽しさや必要性を感じられない限り、集中して行うことは難しいです。
たとえ机に座って勉強しているように見えても、どこか上の空で全く身に付いていないこともあるでしょう。
子どもの集中力を高める方法は?
子どもの集中力を高める方法は、毎日の生活の改善が必要となります。
気軽に取り組めるようなもをいくつか集め、まとめてみました。
- 部屋を片付け、集中できる環境を作る
- バランスの取れた食事を用意する
- 遊ぶときはとことん遊ばせて夢中になれる時間をのばす
- テレビを消したり、スマホをマナーモードにしたりして雑音を消す
- 睡眠時間を確保する
- おやつを用意して空腹を避ける
- 照明を明るくする
一つずつ確認していきましょう。
部屋を片付け、集中できる環境を作る
人間の脳は、視界に入ったものを情報として取り込んで処理をします。
過剰な情報は処理するのも大変です。
集中力をつけるには、まず部屋にある余計なものを片付けましょう。
しゃがんだり、寝転んだりして子どもの目線まで下げてみると、案外部屋の見え方も変わるものです。
部屋にある物の数を減らすだけでも刺激は減るので、集中できる環境を作ることができます。
バランスの取れた食事をとれるようにする
集中力を高めるためには、集中力を保つのに効果的な栄養を取るのはもちろん、脳にエネルギーを与えること、脳をつくるタンパク質を取ること、脳に酸素を与えることが大切です。
「DHA」(ドコサヘキサエン酸)|集中力を保ちやすくなる栄養素
まず、集中力の促進に重要な働きをするのは、DHA(ドコサヘキサエン酸)です。
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、イワシなどの青魚に多く含まれる油脂分で、脳内の神経伝達細胞に使われるため、集中力を保つのに役立つと言われています。
ブドウ糖|脳のエネルギー源
そして、脳のエネルギー源はブドウ糖です。
ブドウ糖は、ごはん、パン、麺などの炭水化物に含まれていて、脳を活性化させて集中力を高めやすくなります。
タンパク質|脳の発達を促す
脳はタンパク質と脂質からできていて、肉や大豆などからタンパク質を取ることで、脳の健やかな成長の力になります。
タンパク質は動物性と植物性のものをバランスよく食べるようにしてください。
鉄分|ビタミンCと一緒にとることで吸収されやすくなる
ほうれんそうや、あさりなどに含まれる鉄分が不足すると脳が酸欠状態になります。
ビタミンCが豊富な野菜やフルーツなどと一緒に食べると、鉄分は吸収されやすくなりますよ。
栄養バランスの良い食事をとり、脳を活性化させることで集中力の向上が期待できます。
遊ぶときはとことん遊ばせて夢中になれる時間をのばす
遊びはじめは単調でも、次第に想像力が膨らみ、遊びに夢中になることがあります。
昼時間やお風呂の時間など、ある程度時間の決まっていることもありますが、子どもの様子次第では、夢中になれる時間を伸ばすことを優先するのも一つです。
また、とことん遊ぶことでメリハリが生まれ、勉強タイムは切り替えて学習できることもあります。
テレビを消したり、スマホをマナーモードにしたりして雑音を消す
テレビやスマホの音が聞こえてしまうと、せっかくの集中が途絶えてしまいます。
子どもに何かを集中させたい時には、気が散らないように音が出るテレビは消し、スマホもマナーモードにするなど配慮が必要です。
睡眠時間を確保する
睡眠時間が短いと、脳の疲れが十分に取れずイライラしたり、間違えやすくなったりして、ますます集中できないものです。
十分な睡眠は翌日に疲れを持ち越さないだけでなく、成長ホルモンが分泌され、体はもちろん脳の発達には欠かせません。
テレビやスマホのブルーライトは眠気を抑制します。
子どもを早く寝させるために、寝る前の習慣を変える、大人がスマホの使用を控えるなどできることから始めてみましょう。
おやつを用意して空腹を避ける
脳のエネルギーであるブドウ糖が不足すると、集中力が欠けてしまいます。
おなかが空いている状態は逆に脳が冴えると言われることもありますが、子どもはなかなか生理現象を我慢するのは難しいですよね。
お腹が空いている時は無理をさせずおやつをあげることで、集中して取り組めるようになります。
照明を明るくする
子どもが遊ぶ部屋が暗い場合は、照明を調節してみましょう。
太陽光に近い照明を選ぶと脳が活発になり、集中力が増します。
ただ、明るすぎると疲れやすくなったり、イライラしやすくなったりするので注意が必要です。自然な光に近い明るさになるように調整してください。
集中力を高める遊びや習い事って?
最後に、集中力を高められる遊びや習い事を紹介します。
どれも指先を使って五感を鍛えたり、形や空間の想像力が必要なものばかりです。
折り紙
折り紙は、できあがりが見えるため「完成するまではやろう」と思いながら集中して取り組みやすい遊びです。
最初は簡単なものから始め、次第に難易度をあげていきましょう。
折り方が載っている本を見ながら作れるようになったら、自分でどんどん作っていくようになります。
最初はうまくは行かないことも多いでしょう。
しかし、諦めずに工夫することで形になる喜びは、失敗しても努力すれば成功するという子どもの貴重な体験につながります。
ジグソーパズル
ジグソーパズルも完成形に向けて取り組める遊びなので、集中力を保ち続けるのに向いています。
このピースはどのピースとつながるのかなど考えることで想像力が養われますし、試行錯誤を繰り返しながら完成させるまでは集中力が不可欠です。
簡単なものから1,000ピース以上のものまで色々あるので、子どもの年齢や能力に合わせて少しずつレベルアップしてみるといいですね。
ピアノなどの楽器演奏
ピアノなどの楽器は、「楽譜を読む」「音を聞く」「両手で異なる動きをする」など様々なスキルが必要とされ、演奏するにはそれなりの練習と集中力が求められます。
「ワンフレーズ演奏できるまで」「1番目ができるまで」など目標を持ちながら取り組めるので、上達するほど集中力を長く引き伸ばすことも可能です。
水泳
水の中では自由に呼吸することができないため、正しいフォームや適切なタイミングでの息継ぎを身に付けないと苦しくなって泳げません。
そうやって自分自身の動きに全神経を集中させるため、水泳は集中力が鍛えられます。
水に慣れれば慣れるほど、長く泳げるようになり、水泳が楽しく感じられるようになるでしょう。
努力した後に成長する自分を感じることができ、やればできるんだという自信につながりますよ。
子どもの集中力は年齢を重ねるごとにどんどん長くなる!
子どもの集中力が無い原因と、集中力を付けるためにできることをまとめます。
【集中力が無い原因】
- スマホやゲームの時間が長くて脳が疲れるから
- おもちゃやテレビなど周りに刺激が多いから
- 体に椅子が合っていないから
- しっかりとした食事や睡眠を取れていないから
- 勉強に興味がなく、させられている感をもっているから
【集中力を付けるためにできること】
- 部屋を片付け、集中できる環境を作る
- バランスの取れた食事を用意する
- 遊ぶときはとことん遊ばせて夢中になれる時間をのばす
- テレビを消したり、スマホをマナーモードにしたりして雑音を消す
- 睡眠時間を確保する
- おやつを用意して空腹を避ける
- 照明を明るくする
幼児期の頃は大人が期待しているほど集中力は続かないものです。
ただ、年齢を重ねるごとに、興味や関心のあるものに対する集中力は驚くほど長くなります。
今は心配かもしれませんが、少しずつ集中力は付いていきますし、日頃の遊びや習い事を通しても身に付けることは可能です。焦らず、温かく見守っていきましょう。