道路の白線や縁石などがあると、子どもはその上を歩きたがりますよね。
白線ならまだしも、縁石だとバランスを崩してケガでもしないかとヒヤヒヤしてしまうものです。
そこで今回は、床にある線の上を歩くことで子どもの能力をUPさせる「線上歩行」について紹介します。
線上歩行は、幼児教育で行われることもある活動の一つ。
縁石や平均台のように高さを必要としないため、小さな頃からでも取り組めますし、家庭でも簡単に始められる活動です。ぜひ参考にしてください。
線上歩行とは?
先ほど「床にある線の上を歩くだけで、子どもの能力がUPする」と一言で紹介した「線上歩行」ですが、子どもが力を付けるためのやり方があります。
まずは線上歩行のやり方とその目的について確認しておきましょう。
白線からはみ出さないようにバランスを取りながら線上を歩くこと
線上歩行とは、床に引かれた線の上をはみ出さないように歩く活動です。
歩き方は、前に踏み出す足のかかとを、もう一方のつま先にくっつけて歩きます。(綱渡りのように、両足を交互に小股で進む感じ)
線の形状は、2×3メートルほどの空間に、幅5cmくらいの白いビニールテープで円を描いたものが多いです。
やってみるとわかるのですが、線からはみ出さないように歩くのは、大人でも結構集中力を使います。
まだ体の軸がしっかりしていない幼児にとっては、かなり集中してバランスをとらないと難しいものです。
慣れないうちは、一直線の線の上を歩くと良いでしょう。
3歳から4歳は身体を使った遊びの経験をもとに動き方を身に付ける時期
文部科学省の「幼児期運動指針」では、3歳から4歳ごろの幼児期に必要な環境について、次のように述べています。
遊びの中で多様な動きが経験でき、自分から進んで何度も繰り返すことにおもしろさを感じることができるような環境の構成が重要になる。
つまり、遊びを通して「体のバランスをとる動き」や「体を移動する動き」を経験することで、4歳から5歳にはそれまでに経験した基本的な動きが定着し始めます。
バランスを取りながら歩くという線上歩行は、幼児期の発達に合った活動なんですね。
モンテッソーリ教育の活動の一つ
モンテッソーリ教育とは、子どもにはもともと「自分を成長させ、発達させる力」が備わっているという考え方の教育法で、線上歩行はモンテッソーリ教育の活動の一つです。
線上歩行の目的は、活動を通して自分を成長させるために、心や身体の動きを整理すること。
身体を使った活動なので、バランスや歩行能力の向上ばかりに目がいきがちですが、モンテッソーリ教育では線上歩行を通して心の成長を促すことができると考えられています。
線上歩行にはどんな効果やメリットがある?
線上歩行のメリットや効果をまとめました。
- 平衡感覚を養う
- 体幹が発達する
- 集中力がつく
一つずつ見ていきましょう。
平衡感覚を養う
先の「幼児教育運動指針」によると、幼児期は体に多様な運動刺激を与えて神経回路を発達させ、とっさの時に身を守る動きやスポーツに結び付く動きなどを身に付けることが大切だとされています。
私たちの生活で欠かせない「平衡感覚」は、幼児期に遊びを通して急速に発達する感覚の一つ。
線上歩行なら、転ばないようにバランスを保つといった反射的なコントロール感覚を養うことができます。
体幹が発達する
体幹とは、首から上、それに腕や足を除いた部分のことです。
体幹は意識して鍛えないと身に付きません。
最近は、体幹が弱いために姿勢が崩れ、椅子に長時間座れない子どももいるくらいです。
線上歩行なら、体の軸を意識できるので、体幹を発達させることもできます。
集中力がつく
線上歩行は、子どもに集中力を付けることのできる活動でもあります。
基本的な動きを身に付ける幼児期は、手先を動かすよりも体を使った活動で集中力を鍛えましょう。
子どもは本来、幼児期にじっとしているのは苦手なもの。動きたい欲求でいっぱいです。
そんな時期だからこそ、細い線の上をはみ出さずに歩くことで、少しずつ集中力が身に付きます。
線上歩行を家庭でする方法は?
線上歩行は、家庭でも簡単に取り入れることができます。
ここでは、年齢別、レベル別に見ていきましょう。
部屋や廊下にマスキングテープを貼って線や楕円を作る
準備するものは、マスキングテープのみ。剥がすのも簡単で、跡も残りにくく、100均でも手に入るのでおすすめです。
3歳未満の子どもには、まずは一直線に貼ったテープの上を歩かせましょう。
最初は歩幅などは気にせず、線の上を歩くことに集中させるのがポイントです。
慣れてきたら歩幅を狭めゆっくり綱渡りをする感覚で、前に踏み出す足のかかとを、もう一方のつま先にくっつけて歩きます。
この歩き方で、真っすぐ歩くことが上手になってきたら、次は楕円状にマスキングテープを貼って、その上を歩く練習をしてみましょう。(2×3メートルほどの空間に、幅5cmくらいの楕円が理想)
慣れてきたら頭の上に輪を載せたり、鈴を持たせたりしてレベルを上げる
4歳くらいになると、バランス感覚が向上して上手になってくるので、道具を使って少しずつレベルを上げてみましょう。
例えば、頭の上に輪っかを載せ、落とさないことを目標にしてみてください。
他にも、鈴を持たせて音が鳴らないように歩くパターンや、水の入ったコップをこぼさないように歩くパターンなどがあります。
道具を使うと、音が鳴ったり、水がこぼれたりして、子どもにとってもバランスを崩したことが分かりやすいようです。
「次は輪っかを一回も落とさずにやってみようか」と目標をつくってあげたり、子ども同士で交替しながらやったりすると、楽しんで続けられそうですね。
線上歩行で身に付くのはバランス感覚と集中力!
線の上を歩くという簡単な活動ですが、「線の上を歩く」「つま先とかかとを付ける」「しゃべらない」ことをルールにして取り組むだけで、子どものバランス感覚や集中力が鍛えられます。
似たような活動はどの保育園や幼稚園でも行われていますが、家庭でも比較的取り入れやすい活動なので、マスキングテープを使って今日からやってみてはいかがでしょうか。
もちろん、家庭で行う場合は、よろけて転んでしまってもケガをしないよう、線を貼る場所を考えたり、周りの物を片付けたりして安全を確保したうえで行うようにしてくださいね。