子どもの言葉の発達は、親にとって気になるものですよね。
大体1歳前後で最初の言葉を話し始め、2歳頃になると2語文を話すようになると言われていますが、言葉の発達は個人差がとても大きいです。
1歳前から話し始める赤ちゃんもいれば、2歳頃でも言葉が出ないという子も少なくありません。
子どもの言葉の発達が気になる方は、モンテッソーリ教育に取り入れられている「3段階の名称練習」を試しにやってみてはいかがでしょうか。
エドワード・セガンによる「3段階の名称練習」とは?
「3段階の名称練習」とは、エドワード・セガンが考案した言語教育の練習法です。
エドワード・セガンは、フランス人の医師であり障害児教育に力を尽くしました。
彼は、モンテッソーリ教育の開発者であるマリア・モンテッソーリに影響を与えた人物でもあります。
モンテッソーリ教育とは、「子どもたちは本来自分自身を成長させる力を持っている」という考えのもと、自立的で学び続けることができる人間を育てることを目的とした教育法です。
具体的には、独特の教具を使って、日常生活の練習・算数教育・感覚教育など5つの分野を学んでいきます。
この中の言語教育の分野で、セガンの「3段階の名称練習」が取り入れられています。
関連:モンテッソーリ教育とは?教具って何のため?モンテッソーリの特徴やメリット・デメリットを解説
「3段階の名称練習」を実践する
それでは実際に、「3段階の名称練習」について確認していきましょう。
子どもに「リンゴ」という言葉を教えるケースを考えていきます。
第1段階「記銘」
最初の第1段階では、ものと名称を結びつける「記銘」をします。
リンゴの例で例えると、子どもにリンゴを見せて「これはリンゴだね。」と声を掛けることです。
「これは~です(だね、だよ)。」の構文で声を掛けるようにしましょう。
第2段階「保持」
次の第2段階は、第1段階で覚えたものと名称の結びつきを強める「保持」です。
具体的には、「リンゴはどこかな?」と子どもに指させたり、「リンゴを取って」と声かけしたりします。
第3段階「再生」
最後の第三段階は、覚えたものの名称を応える「再生」です。
リンゴを見せながら子どもに「これは何ですか?」と尋ね、子どもに答えさせます。
「3段階の名称練習」をする時の注意点
この「3段階の名称練習」を行う際の注意点をまとめました。
- 身近な実物→徐々にカードへ
- 言葉はゆっくりと話す
- 言葉が出るようになってきたら3段階目へトライ
- 子どもの様子を見ながら無理なく進める
- 繰り返し続けることを大切に
まずは身近にある実物から始め、徐々にカードへと移行していく
モンテッソーリ教育では、子どもが発達する過程には、特定の機能を成長させるための「特別な感受性」、いわゆる「敏感期」があるという考え方が用いられています。
なかでも、「感覚の敏感期」は、手に触れるものや実体験を通して物事を理解できる時期、「言語の敏感期」は、人の話す言葉を繰り返し真似て語彙を増やしていく時期です。
言語を覚えていく際に、子どもが実物を見たり触ったりすることで、物の名前と一緒に大きさや重さ、色、形、使い方などの情報を関連付けて覚えられます。
また、子どもは実際のもので考える具体的思考の段階を経てから、徐々に絵カードのような抽象性の高いものを考える抽象的思考へと発達していきます。
ですから、最初に物の名前を教えるときには、実物を使うのがよいでしょう。
先ほどのリンゴの例で言えば、最初はリンゴの実物→おもちゃのリンゴ→リンゴの写真→リンゴの絵カードといった順に移行していく感じです。
言葉はゆっくりと話す
第1段階や第2段階では、教える側はゆっくり言葉を伝えることを意識しましょう。
よく知らない言語を聞き取る場面を、想像してみてください。
相手が流暢にペラペラと話していると聞き取るのが難しくても、ゆっくりはっきり話してくれると、少しは聞き取りやすいですよね。
子どもに話す時も、同じようにゆっくり話してあげることで聞きやすくなります。
ただし、いくらゆっくりとは言っても、不自然な話し方にならないようにしましょう。
あくまで、自然な話し方の中で、普段よりも少しペースダウンした伝え方にするのがポイントです。
3段階目までいくのは、言葉が話せるようになってから
すでに紹介した通り、第3段階の再生では、物の名前を答えるようになっています。
つまり、まだ話し始めていない赤ちゃんには3段階目の練習はできません。
子どもの集中力や吸収力を見て無理なく続ける
子どもは、大人よりも集中できる時間が短いです。
親としてはたくさん言葉を覚えて欲しいとの気持ちもあるかと思いますが、一度に多くの名称を練習して覚えるのは、子どもにとっては難しいかもしれません。
そのため、最初は3語程度から始めるのがおすすめです。
子どもの様子を見て、増やせそうなら6語くらいまで増やしましょう。
正しく言えなくても強く注意せず、繰り返すことを大事にする
3段階目の再生は、子どもにとって難しい課題なので、あまり無理に行わなくても大丈夫です。
子どもの発達状況によっては、正しく言うことが難しい場合もあるでしょう。
もし子どもが間違えても強く注意せず、正しい名称を覚えられるように、繰り返し続けていくことに注力しましょう。
まとめ|あまり神経質にならず、ゆっくり見守っていこう
言葉は個人差が大きいため、つい同じ月齢の子どもと比べてしまうものです。
ただ、あまり神経質になりすぎると、親のピリピリ感が子どもにも伝わってしまいます。
いつかは言葉が出るようになってくると思って、焦らず見守っていくことが大切です。
セガンの3段階名称を少しずつ取り入れて、無理なく進めていきましょう。