2020年度に小学校でプログラミング教育が始まったことは大きなニュースになりましたが、実は中学校でも2021年度からプログラミング必修化されます。
プログラミング教育は、IT化が進む現代社会で子どもたちが生きていくために、欠かせない学びですよね。
とはいえ、これまでのパソコンの授業とは何が違うのか、どのようにプログラミング教育が取り入れられていくのかなど、よく分からない点も多いでしょう。
そこで今回は、中学校でのプログラミング教育への取り組みがとのように行われるのか、旧学習指導要領との違いやプログラミング教育の実践例を紹介します。
後半では授業以外でプログラミングを学ぶ方法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
プログラミングが2021年度から中学校で必修化!
2021年度から新学習指導要領実施に伴い、中学校でも本格的にプログラミングが必修化されます。
学習指導要領は、文部科学省が定める教育課程の基準で、時代の変化や社会のニーズに合わせて10年に1度改訂されており、2021年度がちょうどそのタイミングというわけです。
中学校のプログラミング教育は、この改訂によってどのように変わるのでしょうか。
中学校におけるプログラミング教育の「全面実施」とは
そもそも学習指導要領の「全面実施」とは、2021年度に中1~中3となる子どもたちのカリキュラムが、完全に新学習指導要領へ移行することを指します。
いきなり学習指導要領が変わると、本体学ばなければいけない内容を飛ばしてしまうことになるため、新学習指導要領への移行は段階的に行われるのです。
今回でいえば、2018年度から移行期間が開始され、2020年度までにその移行期間が完全に終了。
2021年度から全学年でプログラミング教育が全面実施となるわけです。
ですから、子どもがもし移行期間に該当していたとしても、学習洩れがあるようなことを心配する必要はありません。
中学校で学ぶプログラミングは「技術・家庭」で扱われる
新学習指導要領では、中学校でのプログラミング教育を「技術・家庭」の教科、その中でも「技術」分野で学ぶことになっています。
プログラミングが必修化したからといって、科目にプログラミングが追加されるわけではないのですね。
ちなみに、小学校にも「プログラミング」という科目はありません。
ただ、小学校の場合は取り入れ方が各学校や教員に任せられているので、プログラミングを扱う教科も国語や算数、理科などさまざまです。
新学習指導要領と旧学習指導要領の違い
旧学習指導要領と新学習指導要領の大きな違いは、技術科目に「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題解決」という項目が盛り込まれたことです。
D 情報の技術
(2) ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決
ア 情報通信ネットワークの構成,安全に情報を利用するための仕組み,安全・適切な制作,動作の確認,デバッグ等
イ 問題の発見と課題の設定,メディアを複合する方法などの構想と情報処理の手順の具体化,制作の過程や結果の評価,改善及び修正(引用:文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」)
旧学習指導要領でも、パソコンを使う項目として「デジタル作品の設計・制作」はあったものの、新学習指導要領では、社会に対応できるような思考力や課題解決力が重視されるようになりました。
新学習指導要領のプログラミング教育で特にキーワードとなるのは、「双方向性」と「プログラミングによる問題解決」です。
キーワード①「双方向性」
プログラミングにおける双方向性とは、利用者からの何かしらの働きかけによって応答する機能のことです。
中学校のプログラミング学習では特に、ネットワークを活用してプログラムが応答するシステムを活用することとしています。
例えば、私たちが普段使っている地図アプリも双方向性のツールです。
利用者が検索という働きかけをした結果、ネットワークを利用して検索結果を答えてくれます。
キーワード②「プログラミングによる問題解決」
新学習指導要領では、プログラミングを使って課題解決することが目標とされています。
つまり、プログラミングでWEBページなどの作品をつくるようなことではなく、プログラミングというアプローチで課題を乗り越えるということです。
従来の技術でもパソコンを使ってWebページを作る授業などがありましたが、あくまでも作品の完成がゴールでした。
しかし新学習指導要領では、まず問題を見つけるころから始まります。
そして、問題を解決するためにどのようなツールが必要か考え、設計し、作成、場合によっては修正を加えて改善することまでが授業の一環となっています。
中学校におけるプログラミング教育の実践例
岩手県の中学校で行われたプログラミング教育の実例を見ていきましょう。
参考:文部科学省「中学校技術・家庭科(技術分野)におけるプログラミング教育実践事例集②」
授業では、岩手県が東日本大震災の被災県であることから、災害時の避難所に焦点があてられました。
グループごとに発生しうる問題を想定し、あるグループでは高齢者や車いすの人が利用できる避難所がわかるようなプログラムを作成することに決定。
高齢者や車いすで困っている人が何を質問するのか、どのようなメッセージを返せば課題が解決できるのかを考え、応答の手順を設計し、プログラムを組み立て、改善・修正までを行いました。
プログラミングに用いられたのは、小学生にも人気のあるScratch(スクラッチ)です。
(引用:プログラミング教育実践事例集②)
日本におけるプログラミング教育は、プログラミングの考え方を通して課題を解決することに重きが置かれていることが、この事例からもよく分かりますね。
授業だけでは物足りない…そんな時は?
事例にあげた岩手県の学校のようにプログラミングの授業に力を入れている教員がいれば、学校の授業を通してプログラミング的思考を確実に身に付けていくことができるでしょう。
しかし、「プログラミング」が科目ではない以上、その取り組み度にはかなり差があります。
そのため、通っている学校によっては「学校だけでは物足りない」と感じる子もいるかもしれませんが、もしそうだとしても、学校以外の時間を使ってプログラミングを学んでいけばいいのです。
学校外でプログラミングを学ぶための方法を見ていきましょう。
- プログラミング教室に通う
- プログラミングができる部活へ入る
- オンラインで学ぶ
- 解説動画や無料のソフトを活用する
プログラミング教室やロボット教室に通う
プログラミングを本格的に学ぶ一番の近道は、プログラミングのプロに学ぶことです。
しかし、プログラミング教室は受講料だけではなく、教材費や入会費などいろいろとお金がかかるという問題があります。
月2回(60~90分/回)のレッスンでも月額10,000円前後するような教室もあり、決して安い金額とは言えませんよね。
教室によってどのプログラミングを学べるかも随分と違うので、子どもがやりたいことや費用対効果まで考えたうえで通わせるようにしたいですね。
プログラミングやロボット製作のできる部活動に入る
中学校にプログラミング部やロボット部があれば、積極的に活用しましょう。
まだまだ部活動として設置されていない学校の方が多いですが、私立中学校では同好会や部として活動しているところも増えています。
例えば東京にある私立麻布中学校のパーソナル・コンピュータ同好会は、ゲームを作って文化祭で発表したり、外部のプログラミング・コンテストに出場したりと本格的に活動しているそうです。
また、いずれ工業高校や高専に入れば、学生が多く参加する「ロボコン」などの全国大会もあり、知識や技術を発揮できる場もあります。
プログラミングに関する大会などは最近かなり増えてきているので、出場を目指して学んでいくのも良いでしょう。
オンラインで学ぶ
基礎的な部分までなら、お金をかけずに無料で学ぶことだってできます。
コードの書き方を中心に学ぶなら「Progate」(プロゲート)が便利です。
JavaScriptやHTMLなど、言語に関する基礎知識を無料で学べます。
スモールステップでヒントなどもあり、小学生や中学生でもどんどん進められる便利なサービスです。
筆者もたまにこれで勉強するのですが、キャラクターもかわいくて頑張れます。
解説動画や無料のソフトを活用して独学
その他にも、動画を見て勉強をするのも良いでしょう。
例えば、YouTubeにはScratchやマインクラフトに関する動画がたくさんあり、プログラミングの組み立て方を分かりやすく説明してくれます。
親が分からなくてもネットには詳しい先生がいるのです。
いくつか参考になりそうなYouTuberを見つけておき、子どもと一緒に合うチャンネルを探してみると良いですね。
タブレットやパソコンなどを使えば、プログラミング教室に通わなくても自分の好きなペースで進められます。
まとめ|中学校のプログラミング教育は課題解決を重視している!
中学校におけるプログラミング教育の必修化とその内容について詳しく解説してきました。
本記事のポイントを整理すると、次の通りです。
- 2021年度から中学校で新学習指導要領が全面実施
- 中学校では技術・家庭分野で扱われる
- 旧学習指導要領よりもネットワークを使ったシステム活用を重視
- 授業以外でプログラミングを学べる方法は多い
小学校のプログラミング教育が全教科的に行われるのに対して、中学校では技術・家庭分野で扱われます。
その分より専門的になりますが、どちらかというとプログラミングを使ったツールをもとに、課題解決をすることが求められているため、あまり難しくとらえなくても大丈夫です。
「自分でゲームを作ってみたい」「もっと自分でプログラミングをしてみたい」といった思いが子どもにあるなら、プログラミングを学べる環境を用意してあげましょう。
まずは動画や無料サービスを使って学習を進めるのもいいですし、家庭で行うのが難しければプログラミング教室の通わせてあげると、子どもの興味や関心がどんどんと花開くはずです。