「お腹にいる時からクラシックを聞かせると『胎教』や『育脳』にいいらしい」といった話を聞いたことがある人もいるでしょう。
ただ、それはどのような意味で「脳にいい」のか、クラシック以外の音楽を聞くことにメリットはないのかといった疑問も沸いてきますね。
そこで今回は、乳幼児と音楽の関係性や、クラシックを聞くことの効果について紹介します。
乳児期や幼児期に音楽に触れると何がいいの?
子どもの聴覚は、妊娠28週から31週にかけて発達し始め、音を認識するための仕組みができあがるのが、8ヶ月くらいと言われています。(※)
※平成26年度 広島文化学園子ども・子育て支援研究センター公開講座「子どもの発達と音楽 」要旨より
そして生まれた後は、少しずつ大人と同じくらいの聴力に近付いていくそうです。
まずは、乳児期や幼児期に音楽を聞かせることで得られる効果について見ていきましょう。
言葉の発達を促す効果がある
乳児期の赤ちゃんの耳はだんだんと発達していき、1歳になる頃には大人と変わらないほどの聴力にまで発達します。
身体の中でも耳の発達が速いのは、周囲の「音」を聞いて言葉の発達を促すためです。
生まれて数ヶ月もすると、ママとパパの声を聴き分けて、ママのほうに顔を向けるなど既に音の聞き分けができていることから分かる通り、とにかく音をしっかりと聞こうとします。
乳児期の頃から音楽を聞かせるなど、様々な音に触れさせてあげたいですね。
幼児は音楽に触れることコミュニケーション能力が発達する
有名な幼児音楽教育法の一つに「リトミック」というものがあります。
リトミックとは全身を使って音楽を学ぶ教育法のことで、友達やグループで行われることが多いです。
身体を使って音楽を表現すること、友達の意見を聞いて自分の気持ちの折り合いを付けることなどを通して、コミュニケーション能力を育んでいきます。
自律神経に作用してストレスが軽減される
乳児期の赤ちゃんは自律神経が未発達なため、体温調節がうまくいかなかったり、夜泣きをしたり、便秘になりやすかったりと、言葉にできないストレスを抱えながら生きています。
そんな赤ちゃんでも音楽による癒しの効果が作用し、ストレスが軽減されるそうです。
子守歌を聞いて子どもが安らぎ、眠ってくれるのもその一つ。
赤ちゃんが「快」の気持ちで過ごしてくれると、ママも助かりますね。
幼児がクラシックを聴くことに効果はあるの?
音楽を聞くことが乳幼児の発達に繋がることは分かりましたが、ではクラシック音楽にその効果はあるのでしょうか。
「クラシックを聴くと頭が良くなる」と言われる俗説に迫ってみましょう。
いわゆる「モールァルト効果」は意味が無いと言われているが…
「モーツァルト効果」とは、1990年代に世界的権威のある雑誌「ネイチャー」で取り上げられ話題になった、「クラシックを聴くと脳の発達に良い」と主張される効果のことです。
しかし、実際には「幼児期にクラシックを聴いて脳の発達に良い影響が見られた」という科学的根拠のあるデータは1つもありません。
ではなぜ「モーツァルト効果」という言葉だけが一人歩きしているのでしょうか。
確かに、実際に「ネイチャー」に掲載された研究では、「モーツァルトの曲を聴いた大学生の空間認知のスコアが上がった」という結果は証明されました。
ただ、それは大学生を対象としているため幼児とは何ら関係のないもので、「きっと幼児にも良い効果があるだろう」といった憶測に過ぎないまま、知育の一つとして流行しただけというわけです。
モーツァルトの音楽はリラックス効果がある
2008年に発表された論文『モーツアルト効果と教育への提案』の中で浅田氏は次のように述べています。
モーツァルトの音楽による癒しの効果は長年の実験によって、動物や植物だけでなく、人間にも有効であるということが科学的にも証明されている。
つまり、モーツァルトの曲が脳の発達に良い根拠は無いものの、モーツァルトの音楽にには一定のリラックス効果があることは認められているということ。
学力や脳の発達を促すような効果は証明されていないにしても、モーツァルトの音楽を聞いて全く意味がないということはありません。
子どもや大人がリラックスできるものとして、生活に取り入れてみると良いでしょう。
モーツァルトに限らずクラシックで音感やリズム感を育むことは可能
では、幼児期にクラシックを聴くことには、リラックス効果以外に意味がないのでしょうか。
もちろんそんなことは無く、クラシックを聴くことで音感やリズム感を育むことは可能です。
ただ、あえてクラシックにこだわる必要はありません。
ポップスやジャズ、アニメの主題歌など、様々なジャンルの音楽を聴かせてあげることで、成長の幅を広げてあげましょう。
とくに乳児期の赤ちゃんは、周波数の高い音を好むと言われています。
オルゴールなどを聴かせてあげてみてください。
幼児期におすすめのクラシックは?
普段からクラシックを聴いているという人はそう多くはないでしょう。
家にCDが無く、何から聴かせてあげればよいのか分からないという人のために、家族でも一緒に楽しめるようなおすすめのクラシック曲が入ったアルバムを紹介します。
はじめてのクラシック~親子で楽しむ世界の旅~
収録曲(一部抜粋)
- 子犬のワルツ
- きらきら星変奏曲
- カノン
- 「威風堂々」より第一番
- おつかいありさん
- ぞうさん
発売日:2018年7月4日
CDに付属しているブックレットが絵本のようなタッチで描かれています。
ブックレットを読みながら音楽を聴くことで、より世界の情景が浮かびやすくなり、まるで親子で世界を旅している気分になれます。
収録されている曲は、聞き慣れた曲が多いので大人も楽しみながら聴くことができそうです。
こどもクラシック大全集 音楽のおくりもの
収録曲(一部抜粋)
- アヴェ・マリア
- 花のワルツ
- エリーゼのために
- 交響曲第五番『運命』
- アイネクライネ・ナハトムジーク
- トルコ行進曲
発売日:2005年2月23日
CDは2枚組で、全部で36曲収録されています。
全曲に解説がついているので、曲のイメージや背景を知りたい人にもおすすめです。
クラシックのおもちゃ箱
収録曲(一部抜粋)
- 「おもちゃの交響曲」から第一楽章
- 人形の夢と目覚め
- クシコス・ポスト
- ミッキーマウス・マーチ
- 星に願いを
- 「白雪姫」ファンタジー
発売日:1996年9月1日
題名通り、おもちゃ箱をテーマにしたオムニバス盤です。
堅いイメージのクラシックではなく、聴いてるだけで楽しくなるような曲ばかり収録されているので、子どもでも楽しめるアルバムになっています。
乳幼児期は積極的に音楽を聴かせてあげよう
「モーツァルト効果」が知育として流行ったこともありますが、実際はクラシックを聞くことが子どもの脳に良い影響を与えるわけではないことが分かっています。
ただ、幼児期はクラシックに限らず様々なジャンルの音楽を聴くことで言葉の発達を促したり、音階やリズム感を育んだりする効果があります。
何から聴かせるか迷っている人は、親子で心身ともにリラックスすることができるクラシックから初めてみると良いかもしれません。