「情操教育」という言葉を耳にしたことがある人は多いと思いますが、実際にはどのようなことをするのか、なかなか具体的なイメージが出てこないものでもありますよね。
情操教育を一言で表すなら、子どもの「心」を育てる教育です。
今回は、情操教育の意味や種類、幼児期に情操教育を始めるメリットについて、詳しく紹介していきます。
情操教育とは?どんな意味?
まず「情操」とは、次のように定義されます。
- 芸術的、道徳的、宗教的感情
- 物事に対する持続的な感情傾向
(出典:広辞苑)
簡単に言うと、美しいものやすぐれたものなどに触れた時に感動する、豊かな心のことです。
感動する心というと、絵を見て心を打たれたり、音楽を聞いて心が動いたりといった「芸術的な意味合い」をイメージする人も多いかもしれませんが、それだけではありません。
家族に対する愛情や、他人に対して尊敬する気持ち、命を大切に思う心、良いことを行おうとすることなど、様々な意味合いがあります。
そしてその「情操」を育てる教育が、「情操教育」です。
情操教育の種類
情操教育は、育てる心の種類に合わせて4種類に分けることができます。
- 科学的情操
- 道徳的情操
- 美的情操
- 宗教的情操
詳しい内容を一つずつ見ていきましょう。
科学的情操
科学的情操とは、子どもが感じる「なぜ?」「どうして?」という気持ちのこと。
子どもは、物事に触れた時に疑問を感じます。この疑問を感じるということがとても大切で、疑問を解決しようと自分なりに考え、行動することに繋がるのです。
道徳的情操
道徳的情操とは、「悪いことはしてはいけない」と思う気持ちのこと。
また、「困っている人を助けたい」といった、善い心のことです。
子どもにとっても、友達を叩かない、勝手に人のものを取らない、友達が使いたがったら貸してあげるといった日常で経験することであり、言い換えれば「「社会のルール」とも言うことができるでしょう。
美的情操
美的情操とは、美しいものを見て「キレイだなぁ」と思う気持ちのこと。
情操教育の意味のところでも触れましたが、美しい絵を見て感動したり、音楽を聴いて涙を流すといった情操は美的情操に含まれます。
宗教的情操
宗教的情操とは、命を大切に思う気持ちのこと。
神様や仏様の教えを学び、自分や他者の命について考えます。
そして愛情や尊さを感じるようになるのです。
幼児期に情操教育が重視される理由は?
幼児期に情操教育が重視される理由は、脳の発達と深い関係があります。
幼児期は、脳の「シナプス」という、神経同士を繋ぐ部分が非常に発達する時期です。
生まれてすぐの赤ちゃんの脳は約400gほどですが、幼児期に「シナプス」が著しく発達することで、6歳頃には約1,300gにまで成長します。
大人の脳が約1,400gと言われているので、0〜6歳までの幼児期に脳が完成されていくことがよく分かりますね。
シナプスは、刺激を与えると、その刺激に反応して発達する傾向があります。
そのため、6歳頃までの幼児期に想像力や集中力を養うことや、感性を高めるための教育をしてあげるということが重要と考えられているのです。
情操教育って具体的にどんなことをしたらいいの?
ここまで情操教育の意味や種類について見てきました。
では、具体的な情操教育の方法としては、どんなことをすればいいのでしょうか。
ここでは、家庭でも取り組みやすい、情操教育の5つの具体例について紹介していきます。
- 絵本を読み聞かせして想像力を育む
- 音楽や絵など芸術にたくさんふれる
- 生き物や植物を育てる
- キャンプに出掛けて自然の中で過ごす
- 食事を味わって食べる
絵本を読み聞かせして想像力を育む
手軽に情操教育を始めるなら、絵本の読み聞かせも方法の一つです。
絵本は、ワクワクする冒険の絵本、友達とお別れする悲しい絵本、あたたかい日常が描かれたほっこりする絵本など、数え切れないほどの種類がありますよね。
子どもは絵本を読む(読んでもらう)ことで、絵本の中に描かれている様々な状況や感情を感じ取ります。
そうして絵本の世界に浸ることで、その世界を体験し、自分なりに考え、想像力が育まれるのです。
絵本を読み聞かせをする時は、絵本に集中できる環境を整え、子どもが絵本の世界に浸れるように抑揚をつけすぎないように読むのがポイント。
子どもが自分の心の中に感じた感情を大切にできるよう、絵本の感想を強要するのはNGです。
関連:保育士直伝!子どもが最後まで絵本の読み聞かせを聞くコツって?
音楽や絵など芸術にたくさんふれる
美しい音楽や絵画など、感性を高めてくれる芸術に触れることは、情操教育にもいい効果があります。
美術館やコンサートで「本物に触れる」という経験は、ぜひ子どものうちからさせてあげたいですね。
また情操教育は、見る・聞くという受動的なことだけでなく、自分で表現するということも大切です。
上手い・下手は関係なく、歌を歌ったり、楽器を演奏したりなど、自分で考えて表現することで情操を育むことができます。
生き物や植物を育てる
生き物や植物を育てることも、日常に取り入れやすい情操教育の一つです。命に対して深く考え、責任を持つことが学べます。
自分で主体的に世話をすることで愛情を持ち、命の尊さを感じることができるでしょう。
生き物や植物には命があります。この、リアルな「命」に触れることが、何よりも子どもの心を成長させてくれます。
キャンプに出掛けて自然の中で過ごす
キャンプの醍醐味は、日常とは違う環境の中で、自然を最大限に感じることができることですよね。
自然とは何が起こるか分からないもの。
森の中で昆虫を捕まえる、草むらに寝そべってみる、川で泳いでみるなど、どんなことをしたとしても、何かしら感じるものがあります。
ご飯を食べるためにお米をといでみたり、休む場所を確保するためにテントを張ったり、子どもが普段やらないことにも挑戦するいい機会です。
食事を味わって食べる
ご飯を味わって食べるということは、日常的にできる最高の情操教育です。
これは、別にご馳走を用意しなければいけないということではありません。
美味しいご飯(特に季節を感じられる旬のものがあるといいですね)を、大好きな家族や友達と一緒に楽しく食べるということが何より大切です。
テレビに夢中になりすぎると、ご飯の味がいまいち分からなかったり、昨日食べた夜ご飯が何だったか覚えていないなど、食事すること自体に意識がいっていないことがあるので、たまにはテレビを消してみるということも必要でしょう。
また、近年「孤食」という、家族が不在のため子どもが一人で食事をしなければならない状況が取り上げられています。
「孤食」は好き嫌いや栄養の偏りを助長し、コミュニケーション不足のため社会性を低下させる恐れがあります。
このような観点からも、ぜひ食事はみんなで味わって、楽しく食べられるよう習慣づけたいですね。
まとめ|日々の暮らしの中で情操教育をしていこう
情操教育の意味や種類について紹介しました。
もちろん、保育園や幼稚園でも情操教育は日々行われているものですが、家庭でも絵本の読み聞かせや食卓での会話、植物や生き物を育てながら、子どもの情操を養っていくことはできます。
習い事でリトミックやピアノなどを利用するのも良いでしょう。