勉強するよう声を掛けても嫌がる、習い事も何だか面倒くさそう。
そんな子どもの様子を見て「最近なんだか子どものやる気がない気がする…」と悩んだことがある人は多いはず。
実はそのやる気の無さは、親の言動に原因がある可能性があることをご存知でしょうか。
今回は子どもの成長を妨げてしまうかもしれない「ゴーレム効果」についてご紹介します。
「ゴーレム効果」とは?
ゴーレム効果は、子どものやる気を高めるために避けたいマイナスな現象の一つです。
心理教育学の世界でも時折使われるため、大学や教育現場、職場などでも聞いたことがあるなんて人もいるかもしれませんね。
まずはこの「ゴーレム効果」とは何なのかについて、概要やその由来を確認しておきましょう。
ゴーレム効果って何?反対の意味をもつピグマリオン効果って?
ゴーレム効果とは、「周囲が無関心であったり評価が低いと、本人のパフォーマンスが低下したり成果が出ない」という心理効果のことを指します。
1960年代にアメリカの教育心理学者・ローゼンタールが提唱しました。
では実際にゴーレム効果とはどのような感じなのか、次の例を参考に見ていきましょう。
例えば、学校の先生が「この生徒は授業を聞かない、勉強ができない子だ」と思い生徒に接していたとします。
すると、期待をしていない気持ちはいつの間にか態度に表れて生徒に伝わってしまいます。
期待されていないことを感じ取った生徒は熱心に授業を聞かず、勉強はますます分からくなる一方。
さらに先生の低い評価ゆえにモチベーションも上がらず、さらに勉強への意欲を欠いてしまうことで、成績も悪くなってしまいます。
ここからは、周囲の大人からの期待感を得られないと、子どもの意欲は上がりにくくなるということが分かりますね。
普段子どもに接する時に、「この子は英語に興味がないから期待しても仕方がない」「どうせ私に似て運動は苦手だ」など、心の中で何かを諦めていませんか。胸に手を当てて振り返ってみましょう。
もしかすると、こちらが思っていることが気付かないうちに子どもへ伝わってしまっているかもしれません。
ゴーレム効果の由来は?
ゴーレム効果について分かったところで、合わせてゴーレム効果の名前の由来について紹介します。
ゴーレム効果という名前は、ユダヤ教の伝説を由来としています。
ある昔、ゴーレムという泥でできた人形があり、その額には「emeth」(ヘブライ語で「真理」の意味)と刻印がされていたそうです。
ゴーレムは意思を持たず人に操られて動くのですが、額の頭文字を一つ消されると「meth」(ヘブライ語で「死」の意味)となり、土に還ってしまう人形でした。
このように「人によって受けた影響」から動けなくなったり、持っている力を発揮できなくなったりすることになぞらえて、「ゴーレム効果」と名付けられました。
子供にゴーレム効果を与えないために親ができることって?
このように「ゴーレム効果」を与えてしまうと、子どものやる気を無意識に削いでしまいます。
子どものモチベーションを下げないために、親が気を付けることやできることはあるのでしょうか。
子どもの頑張っていることを褒めて意欲を高める
子どもが何を頑張っているのかを知り、肯定してあげることが子どもの成長を後押しします。
例えば子どもがサッカーの自主練を頑張っているとき、「毎日自主練しているね、すごいね」と言葉で伝えてあげましょう。
できたことや頑張っているところを見つけて、それを本人に伝えることが大切です。
その際、できれば具体的にどんなことを頑張っているのかを、会話をしながら引き出してみてください。
「リフティングを10回できるようになった」「シュートをした」といった具体的な事実を褒めることで、子ども自信が自分のいいところに気付くきっかけをつくることもできます。
それに「親が自分のことを見てくれている、評価してくれている」と知ることは、子どもの自己肯定感に繋がります。
子ども自身の意欲が高まると、やる気を持って自分から取り組んでくれることでしょう。
ちなみに、ゴーレム効果に対して、親の期待が子どもの成長をもらたらす「ピグマリオン効果」というものがあります。
周囲がより期待をしたり評価が高いと、本人のパフォーマンスが上がったり、成果が出る効果のことで、子どもの成長を促すのに有効とされています。
「ピグマリオン効果は子育てに有効?」では、ピグマリオン効果を引き出すためのポイントなどについてまとめています。ぜひこちらも参考にしてください。
「ダメ」より「大丈夫」など否定語を前向きな言葉に言い換えて使う
子どもに何か注意をする際はつい「それはダメ」「違うよ」「やめなさい」などのネガティブな言葉を使いがちです。
ゴーレム効果を避けるなら、子どもに話しかける時はできるだけ肯定的な言葉に変換して伝えるようにしましょう。
例えば、子どもが宿題をしていたとき、間違いを見つけたら「全然違うよ」「何でできないの」と言いたくなりますよね。
そんなとき、まずは「ここまで自力でやれて偉かったね」などポジティブな言葉を伝えてみましょう。
間違えた箇所に関しては、「ここまでは合っていたから、次にやる時はもう一度見直してみようか」など、前向きな言葉になるように工夫して伝えるのが効果的です。
何かを指摘する場合は、間違ったところだけでなく良いところも合わせて伝えると、子どもが肯定的に受け止めやすくなります。
過度な期待やプレッシャーを掛けない
期待することや前向きに捉えることが大切とは言いましたが、子どもに対して、無関心や低い評価ではいけないと思うあまりに、過度に期待をしすぎることが逆効果となる場合があります。
期待が強いプレッシャーとなり、重荷に感じてしまう子もいるからです。
いつも期待の言葉を掛けることが必ずしも正解ということはありません。
ピアノのコンクール前で緊張していたときに、「期待しているよ」という言葉で頑張れる子もいれば、「リラックスしてね」と言われて成果を発揮できる子もいますよね。
期待を直接伝えることが、その子にとってプレッシャーになりすぎないか、子どもの性格を考慮していく必要があります。
かける言葉に困ってしまう時は、結果を期待する言葉よりも、結果を期待する言葉よりも、テスト勉強に取り組む姿勢や過程に目を向けた言葉を選ぶといいでしょう。
時には親の希望を伝えることも必要ですが、その際は「(結果的に達成できなくても)大丈夫だよ」と、子どもが受け止められるように逃げ道ををつくってあげるのも一つです。
幼児期に掛ける言葉や期待は子どもの能力や成長に影響する
周囲の大人の対応や態度によって、子どものパフォーマンスに影響する「ゴーレム効果」についてまとめてきました。
声に出しても、出さなかったとしても、周りの大人がどんな反応をするか、どんな態度で接してくるかは子どもの能力や成長に影響します。
期待をかけすぎても逆効果にはなりますが、期待していることをある程度示すことは非常に大切です。
子どもがのびのびと成長できるように「この子には難しい、できない」よりも「きっとできる」といった前向きな気持ちで関わるようにしましょう。