子どもが生まれたら、幸せな将来を願うのが親心というものですよね。
「我が子に少しでも才能があるなら伸ばしてあげたい」「才能を活かしてしっかりと自分の人生を生きてほしい」という思いから、何かやらせてみようと考える人は多いもの。
そんな時に気になるのが「英才教育」や「早期教育」ですが、これらの違いはどこにあるのでしょうか。
赤ちゃんの英才教育って?
「子どもの才能を伸ばしたい」と思うとき、よく見聞きする言葉が「英才教育」です。
ただ、最近では「早期教育」と混同されて使われ、本来の意味と離れて言葉だけが一人歩きしている部分があります。
そこでまずは、英才教育の本来の意味や、具体的にどのようなことをするのかについて確認しておきましょう。
英才教育ってそもそも何?幼児教育や早期教育との違い
「英才教育」とは、幼児期や学童期に、知能面で優れた才能や素質を持った子どもに対して、その才能を伸ばすための特別な教育のことです。
一方、英才教育と同じように思われがちな「幼児教育」「早期教育」は、文部科学省の「幼児教育の意義及び役割」において、次のように説明されています。
幼児教育とは,幼児に対する教育を意味し,幼児が生活するすべての場において行われる教育を総称したものである。
具体的には,幼稚園における教育,保育所等における教育,家庭における教育,地域社会における教育を含み得る,広がりをもった概念として捉えられる。
…(中略),この幼児期の発達の特性に照らした教育とは,受験などを念頭におき,専ら知識のみを獲得することを先取りするような,いわゆる早期教育とは本質的に異なる。
幼児教育は,目先の結果のみを期待しているのではなく,生涯にわたる学習の基礎をつくること,「後伸びする力」を培うことを重視している。
(引用:文部科学省「幼児教育の意義及び役割」)
※太字はこちらで加筆
以上をまとめると、次のようになります。
英才教育 | 生まれ持っている才能を伸ばすための特別な教育 |
---|---|
幼児教育 | 全ての幼児に対し生活の中で行われる教育 |
早期教育 | 一般よりも早い年齢から行うような、 主に学習や音楽・スポーツでの教育 |
近年では「英才教育」が「早期教育」と近い意味に拡大解釈され、才能の有無にかかわらず、年齢の小さいうちから行う教育のことを「英才教育」とよばれることが増えています。
英才教育はいつから始めるもの?
生まれ持った才能の芽が出てくる前の小さな子どもでも、0歳から3歳ごろまでの右脳が優位な時期に、脳の発達に合わせた刺激を与えていくと、子どもの持つ才能を伸ばすことに繋がると言われています。
ただ、子どもが関心を示さなかったり、嫌がるものを無理に進めたりしても、与えられるものを嫌いになってしまい、関心を失ってしまう可能性もあるため要注意。
英才教育を始めるタイミングは、子どもの脳の発達や体、心の成長に合わせるのが一番です。
具体的にどんなことをするの?
戦前は、ヨーロッパや日本で、バイオリンなどの芸術を中心に早期教育が行われていました。
しかし現在では、子どもが興味をもったものをいろいろと体験し、伸びそうなものを集中的に行うことが多いです。
例えば、英会話・音楽・スポーツ・スイミングなど、将来のことを考えて役立つものは人気があります。
また、0歳から通える幼児教室もあります。
具体的には、発達に合わせたおもちゃや教材などを使って、親と一緒にレッスンを受けるものです。
家庭でも、通信教育の教材で英語に親しんだり、おもちゃやテキストなどで発達に合った遊びができるものもあります。
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赤ちゃん(0歳児)のうちから英才教育を始めるメリットって?
0歳児から教育を始めるメリットについて考えてみましょう。
0歳から3歳までに刺激を与えることで右脳の発達を促す
脳と教育の関係に関する教育から、人間の脳は、0歳から3歳の間に右脳が優位に働くことが知られています。
一方で、3歳を過ぎると左脳が優位になり、発達の比重が移り変わるそうです。
つまり、ひらめきや直観力などをつかさどる右脳の発達を促すなら、3歳までにたくさんの刺激を与えてあげることが大切ということになります。
生後8か月から15ヶ月はシナプスの数が最大!
また、生後8~15ヵ月の頃に、脳のあらゆる場所でシナプスの数が最大となり、この時期に脳に刺激を与えて働かせると、シナプスが働いて、ニューロンが情報を送れるようになります。
そして、成長の段階の正しい時期に、五感に働きかける刺激を正しく与えることで、脳が発達していくのです。
早い時期からバランスのよい適切な体験の機会を与えることで、子どもが興味関心を示すことや、持っている才能をいち早くみつけるきっかけとなります。
早いうちに興味や関心の方向性が分かれば適切な指導を受けられる
もしも、子どもが興味を持ち喜んでやっているのであれば、可能な限り、より良い指導を受けられる環境を整えることもできるでしょう。
早くから適切な指導を受けることにより、無理のない自然な形で、言語や音楽的な技術を身につけることができますし、子ども自身が達成感や自信をもつことができたり、将来の可能性を広げることにも繋がります
参考:東京都教育委員会「乳幼児期を大切に~子供の発達の科学的知見と親の学習支援」
赤ちゃんの頃からの英才教育にデメリットはないの?
子どもに良いことだらけのように思える英才教育ですが、以前からいくつかのデメリットも指摘されています。
与えられることに慣れると興味や好奇心をもちにくくなる
年齢が低いうちから教育を始めると、子どもが物心つく頃には生活の一部となっているでしょう。
すると子どもは、自分のやることがすでに用意され、与えられたものをこなしていくのが当たり前になってしまいがちです。
また、知識の先取りのような内容のものは受け身ばかりになり、「なぜだろう?」と疑問を持ったり、自分で考えて行動したりする機会が減ります。
さらに、習い事などで時間を取られて、じっくりと好きな遊びをする時間がないと、「面白そう」「これやってみたい」というような、興味や好奇心をもちにくくなるかもしれません。
友達と遊ぶ機会が少ないとコミュニケーション力や社会性が育ちにくい
子どもは友達と一緒に遊ぶ中で、人と関わる楽しさや、遊ぶなかでのルールを学びます。
家族との関わりだけでは、親子や兄弟としてある程度関係性が決まっていますが、家族以外の友達と遊ぶことでこそ得られる力があります。
例えば、友達と遊んだり、ちょっとしたケンカをして仲直りをしたりするなどの体験を通して、相手を思いやる心が育っていきます。
子どもにとって、友達と遊ぶことはとても大切な経験なのです。
一方、友達と自由に遊ぶ機会が少ないと、コミュニケーション力やルールを守るなどの社会性が育ちにくくなってしまいます。
親の押し付けに対して子どもがストレスを感じる可能性がある
子どもが成長してくるにつれて自分のやりたいことが出てくると、習い事よりもそちらを優先したくなるでしょう。
そのようなとき、「せっかくここまで続けてきたのだから」「あなたには才能があるから」と、親が教育を押し付けようとすると、子どもはストレスに感じてしまいます。
また、親の期待に応えようと頑張りすぎてしまう子どもも、ストレスを抱えてしまう可能性があります。
関連:親の期待が子どもに影響するピグマリオン効果は子育てに有効?
0歳から英才教育を始める時の心構え
これまでにご紹介した、赤ちゃんから英才教育を始めることのメリット・デメリットを踏まえて、実際に英才教育を始める時に意識しておきたいことを確認しておきましょう。
日常のなかで自然と学べる環境をつくる
「右脳の発達が優位な3歳までに何かをやらせないと」「音楽や言語習得の臨界期までに教育を始めなければ」と親自身が焦っていませんか?
教育を優先しすぎると、子どもの興味を失わせることになったり、成長を妨げたりするかもしれません。
教材や課題をこなすことが目的になってしまえば子どもはやる気を失う
「将来、娘が英語を好きになって話せるようになったら、生きる世界が広がるだろうな。」と思い、娘に家庭で英語学習をさせていました。
ですが続けていくうちに、あるとき娘から「もうやりたくない。」と言われてしまったのです。
娘の「もうやりたくない」が原点に返るきっかけになった
そこでようやく、カリキュラムをきちんとこなすことに私の意識が向いてしまっていたことに気付かされました。
娘の「もうやりたくない」という言葉のおかげで、何のために英語を始めたのかを思い出すことができたのです。
それ以降、娘の気が向かない時は、歌をかけ流すだけにしたりして、無理に進めないようにしました。
そして娘の好きなぬりえやダンスも取り入れていくようにすると、また自分から取り組むようになりました。
やることが目的ではない。学びを通して子どもが何を得られるかが大切
その後、小学生になった娘は英語教室に通うようになり、仲良くなった友達と一緒に楽しみながら英語を学んでいます。
子どもは、じっくりと好きな遊びをしたり、友達と遊んだりすることで、コミュニケーション力や社会性など、これからの人生を生きていくうえで大切な力を育てていきます。
他の赤ちゃんと比べない
子育てをしていると、ついつい他の赤ちゃんと比べてしまったり、他の家庭の教育状況を見て焦ったりすることがあるかもしれません。
けれども、生まれたての赤ちゃんは、すでに一人ひとり個性を持っています。皆それぞれに個人差があって当たり前なのです。
親子でふれあいや遊びを楽しみながら、目の前の我が子がどんなことを喜ぶのか、どんな時に興味を持つのか、まずは温かく見守ってくださいね。
まとめ|子どもの興味や好きな気持ちを大切に!
英才教育と早期教育、幼児教育の言葉の違いや、広義における英才教育としてのメリット・デメリットについて解説してきました。
筆者の体験談でも触れたように、知育に夢中になるあまり「何のためにその学習をしているのかを親がすっかり忘れてしまっている」なんていうのは、早期教育にありがちな姿です。
しかし、教材はツールであって、目的ではありません。
幼児教育には様々な教材がありますが、それらをただこなすことだけを目指すのは違います。
子どもの興味や関心、好きという気持ちを大切にしてあげることが何よりも大切です。