一般的に、読書が知的能力に及ぼす影響は大きいとされ、インターネットや雑誌でも読書が推奨されているのはよく目にしますよね。
実際、読書と言語能力の関係についてはこれまで多くの研究が行われてきており、読書量や語彙力、文章理解力の間にはお互いに促進する関係があると言われています。
また、小学校1年生のときの語彙力の差は小学校6年生になっても埋まらないとも言われ、幼児期にどれくらい読書をするかといった環境や習慣がいかに重要かが分かりますね。
ただ、子どもをもつ親からは次のような声も聞こえてきます。
読書は教育にいいと言われても、子に「本を読みなさい」と言うほど読みたがらないものです。
そこで今回は、子どもが読書好きになると得られる効果や、子どもを読書好きにする具体的な方法について紹介していきます。
子どもが読書好きになるとどんな効果があるのか?
冒頭でも少し触れましたが、読書好きになることで得られる効果は様々なものがあります。
- 読解力が上がる
- なりたい自分を考えたり、夢をもったりできる
- 知識豊かな子になる
- 記憶力や語彙力が向上する
それぞれ詳しくみていきましょう。
読解力が上がる
OECDが2018年に調査した「生徒の学習到達度調査(PISA2018)」によると、読書について「大好きな趣味の一つだ」と肯定的にとらえている生徒ほど、読解力の得点が高い傾向にあるという結果が出ています。(※)
また、読書の中でもフィクション・ノンフィクション・新聞をよく読む生徒は読解力の得点が高い傾向にありました。
「文章を読む力」は、国語だけでなく算数やそのほか全ての教科において必要になってくるため、学習適応能力が高くなるのでしょう。
(※)参考:文部科学省・国立教育政策研究所
なりたい自分を考えたり、夢をもったりできる
読書が好きだと読書量が多くなり、本の登場人物や、著者など、様々な人の考え方に広く触れることができます。
本や漫画に全く触れない子どもが知っている大人は、家族や親戚、学校や幼稚園の先生、お気に入りのYouTuberくらいですよね。
将来について考えたとしても、出てくるのは親の職業や学校の先生、アニメやYouTuber、習い事をしていたらその関係のことくらいでしょう。
一方、普段から様々な分野の本を読んでいる子どもであれば、自分や周囲の人にはない考え方を知ったり、職業や生き方を知ることができます。
それによってたくさんある選択肢の中から「自分もこんな風になりたい「将来はこんな仕事をしたい」と考えるようになるかもしれません。
読書をするということは、将来の選択肢を広げることにもなるのです。
知識豊かな子になる
子どもは、読書を通して知識を広げ、自分のものにしていきます。
子どもは大人に比べて当然経験に乏しいです。
そのため、野菜を描いてといっても、実際に収穫したことがある子どもと、そうでない子どもでは野菜の描き方が全く違います。
同様に、絵本や図鑑、本などをたくさん読んできている子は、それだけ知っていることが多いものです。
本を積極的に読むことで、普段の生活や経験と結びつけながら、より自分なりの知識としていくことができます。
記憶力や語彙力が向上する
本を読みその内容を理解するには、登場人物や話の流れを記憶していく必要があります。
本が好きで読み慣れている子どもと、そうでない子どもでは、この記憶力に差が出てくるのは想像しやすいですよね。
京都府立大学の研究「絵本と認知能力の関係」によると、家庭の読み聞かせは、子どもの記憶力や語彙力を向上させる可能性があるそうです。
高頻度群と低頻度群の間に読み聞かせ実施前の時点で短期記憶と語彙力の能力に差があったことは,日常的な家庭での読み聞かせによりこれらの能力が向上する可能性を示唆している
引用:京都府立大学「幼児期の集団および家庭における絵本の読み聞かせと認知能力」(2020)
実験では集団での読み聞かせと家庭の読み聞かせの相乗効果までは分からなかったものの、家庭における読み聞かせの大切さが示されています。
本を読むことに抵抗なく育った子は、いずれその語彙力を駆使して様々な本を読み進めていくことでしょう。
読書が好きな子ほど、読めない漢字や知らない表現が出てきても、文脈から読み取ったり調べたりすることを通して、どんどん語彙力を増やしていきます。
子どもを読書好きにする方法は?
それではどうすれば子どもを読書好きにすることができるのでしょうか。
ここでは、家庭でも簡単に実践できる7つの方法を紹介していきます。
- 乳幼児期のうちにたくさん絵本の読み聞かせをする
- 言葉が出てくるようになったら、絵本を使ってやり取りをする
- 子どもが読みたいと思うものを読ませる
- いつでも取り出せる場所や見える範囲に本棚を置く
- 地元の図書館に通うのを習慣化する
- 本を読まない時期があっても無理に勧めるようなことをしない
- 親も日常的に読書をする
乳幼児期のうちにたくさん絵本の読み聞かせをする
まずは乳幼児期のうちから、たくさん絵本を読み聞かせするのがおすすめです。
小さいうちから読み聞かせをすることで、読書がとても身近な存在になります。
その時に大切なのは、読み聞かせを通して、親子で楽しい時間を過ごすこと。
楽しい・面白いといった気持ちをもってもらうことが、本に対する抵抗感を無くす一歩です。
関連:絵本の読み聞かせはいつからする?お腹の子や赤ちゃんにも効果はあるの?
言葉が出てくるようになったら、絵本を使ってやり取りをする
言葉を話すようになってきたら、絵本でやりとりをするのもいいですね。
例えば、いろいろな果物が出てくる本を一緒に読んでみましょう。
「このスイカは夏に食べたね。みんなでスイカ割りをしたよね。」「これはみかん。今日のおやつで食べたね。どんな味がした?」など、生活と絵本の内容を結びつけていきます。
そうすることで、小さな子どもでも絵本に興味を持ちやすいです。
やりとりをする間に子どもからどんな答えが返ってきたとしても、それを受け入れ認めてあげることで子どもは安心でき、「絵本を読むことって楽しい!」と思ってくれるでしょう。
関連:保育士直伝!子どもが最後まで絵本の読み聞かせを聞くコツって?絵本の持ち方や子どもの座り方も大切
子どもが読みたいと思うものを読ませる
小さな子どもや、本を読み慣れていない子どもは、いきなり「どの本が読みたいの?」と聞かれても、なかなか選べません。
最初は大人が子どもの興味のありそうなものを選び、きっかけを作ってあげましょう。
そして「こっちとこっち、どっちにする?」や、「この中から好きな本を持ってきてごらん。」など、少ない選択肢から子どもに選ばせていくことが大切です。
親が一方的に決めてしまうのではなく、子どもが選んだ本を読むようにすることで、子どもにも「自分はこの本が好き!」といった気持ちを持ってもらいやすくなります。
子どもが読書に慣れ、読みたいと思うものが出てくれば、自分で本を選び主体的に読書をするようになるはずです。
いつでも取り出せる場所や見える範囲に本棚を置く
リビングなど、いつでも取り出せる場所や見えるところに本棚を置くという方法があります。
たったこれだけで、子どもが本を手に取りやすくなるのです。
子どもが読みたいと思った時に、すぐ本を手に取れる環境があれば、読書をする機会が増えます。
読書をする機会が増えれば、読書に慣れ親しみ、自分の好きな本や興味のある本も増え、読書が好きになるでしょう。
また、親の本は子どもの本と別にしまう必要はなく、一緒に入れておくといいです。
地元の図書館に通うのを習慣化する
近くの図書館に通うことは、子どもを読書好きにする手軽な方法です。
図書館に行くことで、「本を借りる→返却日までに読み切らないといけない」という流れが生まれ、1冊でも本を借りていけば必然的に読書をするようになるでしょう。
図書館では、何より無料で好きな本を借りられるというのが嬉しいですよね。
本を読まない時期があっても無理に勧めるようなことをしない
前まで熱心に本を読んでいたのに、急に読まなくなってしまうこともあります。
ただ、その時に無理に読書を勧めるしまうと、マイナスなイメージを持ってしまうことになりかねません。
親からすると読んでほしいと思っていても、子どもにとってはそうじゃない時もあるのです。
そういう時もあると心構え、子どもの気持ちが向いた時に、いつでも本を読んであげられる・本が読めるという環境を作っておきましょう。
親も日常的に読書をする
子どもは意外と親の姿を見ているもの。そして真似をするのが大好きです。
親がスマホをしていれば、子どもも真似して触りたがり、いつの間にか操作を覚えてしまっている…なんてことよくありますよね。
親が本を読んでいる姿を日常的に見せることで、子どもの中でも読書が身近なものになり、自分も真似して読んでみようとなります。
子どもの読書離れはよく言われることですが、学生や大人も、普段から本を読む人とそうでない人の差は激しく、1年に1冊も本を読まないという人もいるくらいです。
本を読むことを子どもに求めてばかりにならないよう、大人も本を読むんだよという姿勢を見せていきましょう。
まとめ|読書好きな子どもに育てるなら本のある生活を取り入れて
読書好きになるとどのようなメリットがあるのか、読書好きの子どもを育てるにはどうしたらいいのかということについて紹介してきました。
読書好きな子に育てるポイントは次の通りです。
- 乳幼児期はたくさん絵本の読み聞かせをする
- 本に興味をもってもらう
- 大人の思いを押し付けない
- 本の収納はおしゃれよりも取り出しやすさ
- 地元の図書館をフル活用
- 親も日常的に読書をする姿を見せる
本を好きになってほしいと願っても、そうするための環境や習慣が無ければ思った通りにはいきません。
乳幼児期のうちから積極的に絵本の読み聞かせをしたり、図書館に通ったりして、本のある生活を取り入れていきましょう。
もちろん、動画やスマホ、ゲームなど、子どもたちが明らかに興味をもちそうな、刺激の強いものは生活の中にたくさんあります。
大人がスマホで動画やゲームばかりしていれば、本はそっちのけで同じようにスマホをさわりたいと思うはずです。