親であれば、誰もが一度は、子どもの能力を引き出すために何かできないかと考えたことがあるのではないでしょうか。
特に幼児期の子どもはスポンジのように知識や力を吸収できるため、この時期に「知育」をすることが大切であると言われています。
「知育」という言葉を聞くと、知育絵本や知育玩具を思い浮かべますが、「知育とは何か」と聞かれると、ちょっと言葉に迷いますよね。
ただ逆に、むやみやたらに知育押し付けることで、能力を引き出すどころか、子どもの成長を阻害してしまう可能性もあるそうです。
知育は「自分で物事を考えられる力」を育てる教育のこと
知育とは、文字通り「知能や知力を育てる」ことです。
ここで言う知能や知力とは、子どもが自分で考え、想像し、判断する力を指します。
そもそも、「知育」という言葉がどこから来たのかと言うと、元はイギリスの社会学者であるハーバード・スペンサーが提唱した「三育」が起源です。
彼は、1861年に出版した『教育論』の中で、三育を教育の基本原理として提唱しました。
三育とは「体育」(体を動かす)、「徳育」(道徳的な教育)、「知育」のこと。
福沢諭吉が『学問のすすめ』(1872年)の中でも取り上げるなどして、日本でも教育の基本要素として明治期に広く知られるようになりました。
想像力や判断力、思考力は知的な能力
知育は、単純に読み書きを覚えたり知識を身に付けたりすることを目的としているわけではありません。
将来の可能性を広げられるように、子どもが自分で物事を考え、想像し、判断をする「知的能力」を高めるために取り入れられます。
例えば子どもが中学・高校にもなると、自分で進路を決めるときがやってきます。
将来どんな仕事に就くのか、就職するのか進学するのか、そのために今なにをするのか。
自分の進む道を決めるには、思考力や想像力、決断力が必要となります。
思考力や決断力が高ければ、何か問題に直面したときも状況を把握・分析し、行動に移すこともできるでしょう。
知的能力は学校生活だけではなく、将来仕事をしたり、良好な人間関係を築いたりしていく上でも必要とされる力です。
なぜ幼児期における知育が重視されているのか
知育は、特に幼児期に取り入れるのがいいと言われているのは、脳の発達過程が影響しています。
脳は、3歳ころまでに大人の8割、6歳までには大人の9割ほどが完成しますが、その間に脳では神経細胞がシナプスでつながり、脳内ネットワークが形成されていきます。
シナプスが増えるとネットワークが広がり、脳内で情報を伝えるスピードも速くなるため、いわゆる「頭のいい子」になっていくというわけです。
そうやって脳に刺激を与えてシナプスの形成を促せるのが知育であり、脳が成長している幼児期に行うのが最も効果的であると言われています。
関連記事:なぜ、幼児期の教育が重要なのか。非認知能力が将来の年収や生活に影響することを示した「ペリー就学前計画」
知育はいつから?何歳から始めるのがいい?
では、いつからどのようにして知育を取り入れていけば良いのでしょうか。
0歳から始めてOK!
知育を始めるのに、早すぎるということはありません。
子どもの脳の神経細胞はお母さんのおなかのなかにいる頃から作られていて、脳は生まれてから猛スピードで成長し、6歳までに脳の90%ができあがっていきます。
つまり0歳から6歳は、人生の中で一番多くのことを学び、吸収できる時期で知育に適した時期とも言えるのです。
知育を始めるならずばり、0歳から。できることから取り入れていくので、大丈夫です。
0歳から1歳
0から1歳は、五感の中でも特に聴力と視覚が敏感な時期です。
赤ちゃんは周囲の声を聴き、興味のあるものを目で追って様々なことを吸収していきます。
この時期は、たくさん話しかけることでだけでも脳にいい刺激を与えられるので、朝起きたとき、ミルクのときなど積極的にお話をするようにしましょう。
手遊び歌や絵本の読み聞かせもおすすめです。視覚と聴覚両方に働きかけ、親子で楽しむことができます。
2歳から3歳
2歳ごろになると指先の感覚が敏感になってくるので、パズルや積み木、シール貼りなどの指先を使う遊びを取り入れていくといいでしょう。
積み木を積み上げるという動作は一見単純に見えますが、バランスよく崩さないように調整する必要があり難易度の高い遊びです。
指先を使った遊びをすることで、後にはさみやお箸などの道具を使う練習にもなります。
一方で2歳ごろの子どもは、なんでも口にモノを入れたり投げたりしてしまうこともありますよね。
玩具を選ぶときは誤飲の危険がないもの、角が尖っていないものなど、子どもが安全に自由に遊べるようなものを選んでおくと安心です。
4歳から6歳
4~6歳になると言葉を使ってしっかりとしたコミュニケーションが取れるようになるので、会話や遊びを通じてどんどん言葉の使い方を学ばせていきましょう。
例えばしりとりは、単純に言葉を覚えるだけではなく、記憶力や集中力を付けることができる遊びです。
おままごとなどのごっこ遊びもいいですね。友達と相談しながら役割分担したりシチュエーションを考えたりすることで、コミュニケーション能力や想像力を鍛えられます。
子どもの個性や発達に寄り添った知育を
今回は年齢別に紹介しましたが、発達のスピードや興味関心があるものは子どもによってそれぞれ違います。
言葉を覚えるのがゆっくりとした子もいれば、ごっこ遊びが好きではない子もいますよね。
大切なのは、子どもの成長に合ったもの、子どもの興味関心の高いもの知育を取り入れていくことです。
年齢はあくまでも参考として、子どもの成長を見ながら適切なタイミングで知育玩具や遊びを取り入れていきましょう。
関連記事:早期教育とは?幼児教育の違いって何?早期教育のメリットや弊害、後悔しないために親ができること
知育を始めるときの注意点
子どもの知的能力を伸ばすために役立つ知育ですが、取り入れる際には気を付けておきたいポイントがあります。
急がない、慌てない
知育に熱心になるあまり、子どもを急かしたり無理にやらせたりしないようにしましょう。
知育にいいからと言って、年齢や発達に合わないものを取り入れても効果は期待できません。
子どもが楽しめずに、嫌になってしまうこともあるでしょう。
また、他の子ができることを自分の子ができなかったとしても、比較して焦る必要はありません。
他の子と比べず、子どもが楽しめるものを取り入れていくようにしてください。
教え込まない
知育玩具の遊び方やルールなどを、親が教えすぎないようにしましょう。
例えばパズルで子どもがなかなか正解にたどりつかなかったとき、つい教えたくなってしまいますよね。
しかし子どもが自分で考えたり、失敗を繰り返したりすることは大切な経験です。
親が先回りして教えてしまうことで、子どもが試行錯誤する貴重な機会を奪ってしまうこともあります。
教えるよりも、親も一緒に遊ぶイメージで取り組んでみましょう。
できないことよりもできたことを褒める
子どもができたことに焦点を当てて、褒めるようにしましょう。
特に幼児期は「できた」という気持ちが「もっとやりたい」という意欲につながる時期です。
例えばお絵かきであまり上手く描けなかったとしても、描写の忠実さを評価する必要はありません。
カラフルな色を選んでいたら「素敵な色を選んだね」、画用紙からはみ出てしまったら「大きな絵が描けたね」と子どもができたことをポジティブな言葉で伝えてみましょう。
関連記事:親の期待が子どもに影響するピグマリオン効果は子育てに有効?過度な期待は逆効果になってしまうって本当?
知育の種類はいろいろある!何からやってみる?
知育をするにも、手段や種類は豊富にあります。今回は主に4つの知育を取り上げました。
- 知育玩具
- 通信教材
- 幼児教室
- 知育絵本
簡単にできることもあるので、子どもや家庭に合ったものからやってみましょう。
知育玩具
知育玩具は、子どもが考えたり想像力を膨らませたりできるように作られています。
積み木・ブロック・パズルやお絵かきなど様々なものが販売されているので、子どもが興味のあるものを選ぶといいでしょう。
知育玩具として有名なものにレゴブロックがあります。
レゴブロックは自分で好きなパーツを組み合わせて何でも作ることができ、集中力や想像力、思考力を高められるおもちゃです。
レゴジャパンが2018年に行った調査では、東大出身者の68%がレゴブロックで遊んだ経験があるという結果が出ています。
(引用:レゴジャパン)
また、そのうち85%が、集中力や目的達成力、アイデアを膨らませる創造力にいい影響があったと答えました。
(引用:レゴジャパン)
このように知育玩具は一見遊んでいるだけのように見えますが、子どもの知的能力を育むことができるように工夫されているのです。
通信教材
通信教材の場合は年齢に合ったものが定期的に家に届くので、「飽きてしまった」「年齢に合わない」ということが少なく、子どもが喜んで使ってくれることが多いです。
よく知られている知育系の通信教材として下記のようなものがあります。
他にも算数に特化したものやモンテッソーリ教育を取り入れたものなど教材ごとに特徴があります。
いくつか資料請求をしてみて、家庭の教育方針や子どもに合ったものを選びましょう。
幼児向け通信教育・通信教材おすすめランキング!子どもに最適な教材の選び方は3つの軸で決める!
幼児教室
よりしっかりと知育を取り入れたい、という方は幼児教室に通うのもいいでしょう。
幼児教室は、教育のプロの視点から独自のカリキュラムで、子どもの成長に合わせた指導をしてくれるというメリットがあります。
受験対策が中心のもの、運動系、知育系などタイプも様々です。
例えば幼児教室の中でも有名なベビーパークは、0歳から通える知育系の教室で、大脳生理学と発達心理学を利用した知育を取り入れています。
幼児教室おすすめランキング!通って良かったと思える幼児教室の選び方
知育絵本
日常生活の中で取り入れやすいのは知育絵本です。
普通の絵本と異なり、知育を重視した絵本では子どもの年齢に合わせて想像力を引き出すような色調、好奇心を刺激するようなストーリーで作られています。
例えば、0歳から楽しめる知育絵本に「もいもい」シリーズがあります。
(引用:Discover公式)
東京大学あかちゃんラボが出版社と共同研究して作られており、ご存知の方もいるでしょう。
もいもいの絵本は、赤ちゃんの視線をくぎづけにする色・形・言葉で作られており、視覚や聴覚に刺激を与えることができます。
また、3~4歳になってストーリーが楽しめるようになった時期には「しろくまちゃんのほっとーき」もおすすめです。
しろくまちゃんがホットケーキを作る様子が描かれていて、できあがるまでの場面を楽しむことができます。
絵本を読みながら料理の手順を一緒に考えたり、想像しておままごとをたりと子どもの好奇心を刺激する本です。
本屋や図書館で子どもが興味をもつ本を探すのもいいですし、学研や公文などでも知育絵本が販売されています。
まとめ|知育を始めて子どもの可能性を広げよう
知育についての説明と、知育の始め方や方法を紹介しました。
情報が溢れているため、何を参考にするべきか悩んでしまうものですが、ネットやママ友の情報はあくまでも参考にするものであって、一番は子どもの反応です。
英語をやらせたいからと言って、子どもに押し付けてばかりいては、逆に嫌いになってしまうなんてことも珍しくありません。
子どもの様子を見ながら、何がいいか色々試していけば、そのうち親子にぴたっとハマるものに出会えるはずです。
子どもとタイミングを合わせ、無理なく知育を始めて、子どもの可能性を広げていきましょう。