砂でお山をつくったり、スコップですくってみたりする砂場遊びは、子どもが夢中になる遊びの一つですよね。
親としては、爪の間に砂が入った指や、服についた泥の汚れが気になるものの、楽しそうにしている子どもの姿を見ると、つい公園に長居してしまうという人も多いです。
そんな砂場遊びにも、子どもの発育に優れた様々な効果があるのをご存知でしょうか。
今回は砂場遊びのメリット、遊ぶ際の注意点をご紹介します。
砂場遊びにはどんな効果があるの?
砂場遊びは子どもが楽しめるだけでなく、子どもの成長を促す効果がいくつもあります。
- 手指の感覚が育つ
- 運動量が増加する
- 想像力が育つ
- 集中力が付く
- 社会性や思いやりが身に付く
- 科学的な考え方を育てる
一つずつ見ていきましょう。
手指の感覚が育つ
子どもの手指の発達について、医療福祉センターきずなの常石氏は「感覚器の成長・発達」で次のように紹介しています。
経験が少ない乳幼児ほど視覚情報が優位にあり,触覚能力は日常の経験を積んでいくことで発達していくのである.日常の遊びの中で経験を積むことで,3 歳児においてどんぐりの大小を触覚のみで判別できるまでに発達する。
つまり、手指の感覚は生活の中で色々な刺激を与えることで発達するため、乾いている時や濡れている時、石が混じっている時で触感が異なる砂場遊びは、発達に適した遊びというわけです。
触感だけでなく泥団子を作ったり、おもちゃで型を取ったり、穴を掘ったりと指先や手首まで遊びながらたくさん使うことができるのも、砂場遊びの魅力と言えるでしょう。
運動量が増加する
一見すると地味に思える砂場遊びですが、実は多くの運動を伴っています。
立ったりしゃがんだり、スコップで砂を掘ったり、バケツに砂を入れて運んでみたり。知らず知らずのうちに、全身をたっぷり動かしています。
また、砂の上は室内や平坦な道に比べると不安定です。
足を取られて転んでしまうこともありますが、そんな経験をしながら不安定な場所を歩いたり走ったりすることで、バランス感覚を養うことができます。
想像力が育つ
砂場はブランコや滑り台などほかの遊具とは異なり、決められた遊び方がありません。
ですから、想像を膨らませながら無限に遊ぶことができます。
砂で山やトンネルを掘って川に見立てる、砂をごはんに見立てておままごと、砂を固めて泥団子をつくるといったこともできますね。
砂場では、子どもたちが「砂で何をして遊ぼうか?」と自由に考え表現することで、想像力を育てることができるのです。
集中力が付く
砂場遊びは、砂を掘ったり泥団子を丸めたりと、ひとつの作業を繰り返すことが多い遊びです。
「きれいな泥団子を作ろう」、「大きな山を作ろう」など目標を決めて作業を繰り返すことで、一つのことにじっくりと集中する経験ができます。
砂はもろく崩れやすいので失敗してしまうこともあるでしょう。
砂場は失敗してもめげない忍耐力を鍛える場にもなります。
社会性や思いやりが身に付く
砂場では、お友達や保護者とのやりとりを通じて、社会性を育むことができます。
例えば友達と高いお山をつくろうとしたときは、「友達と協力して何かを成し遂げる」ということを学べますね。
また、おままごとを通じて役割分担をしたり、スコップやバケツの貸し借りをしたりして「譲り合うこと」を学ぶきっかけにもなります。
道具の取り合いなどでけんかをすることもあるかもしれませんが、それも成長には欠かせない経験です。
科学的な考え方を育てる
砂場は子どもたちにとって「実験の場」でもあります。
例えば「砂場に水を流し込むとどうなるだろう?」と考えて、水を流してみたとします。
子どもは水がなくなっていく様子を見て、「水は砂に染み込んだのかな?」と頭を働かせることでしょう。
「水と砂を混ぜたら泥になる」「押し固めると固くなる」など自然の法則を、遊びを通じて学べる場所が砂場です。
砂場遊びはいつから始めたらいいの?
このように子どもの発育に優れた効果がある砂場遊びですが、何でも口に入れてしまうような時期や、指をすぐになめてしまう時期に連れていっても良いか不安になりますよね。
砂場遊びをはじめるのに適した時期はあるのでしょうか。
砂を口に入れずに遊べるようになるのは1歳過ぎから
砂場遊びは、子どもが一人で座れるようになれば始められます。
つまり、1歳未満であっても、砂を触って感触を楽しんだり、掴んで落としてみたりと砂場遊びを楽しむことはできるということです。
ただ、砂を掴んでそのまま口に運んでしまう場合も多いので、常に側で様子を見るようにしてください。
個人差がありますが、1歳を過ぎると次第に砂を口に運ばなくても砂場遊びをできるようになります。そこまでいけば、親もある程度安心して見守ることができますね。
ちなみに、1歳を過ぎるとスコップを持ったりして道具を使うなど、遊びの幅も広がっていきます。
安全面や衛生面への配慮も忘れずに
砂場遊びをする際には危険がないか、安全に遊べるかを確認する必要があります。
子どもが楽しく安全に遊べるように、次の点に注意しておきましょう。
砂の中に危険なものはないかを確認する
時折、砂の中にたばこの吸い殻やガラスのかけら、猫や犬のふんが混じってしまっている場合があります。遊ぶ前は、砂場遊びに適した環境かを確認しましょう。
衛生環境が不安な場所では、砂場遊びを控えることも必要です。
定期的に掃除や手入れがされている砂場であれば、安心して子どもを遊ばせることができますね。
例えば東京都江東区では砂場の汚染対策として猫や犬が入れないように侵入防止柵を設けたり、夏と冬に砂の衛生検査を行ったりしています。
公園や自治体によって管理体制は様々で、ホームページ等で公表している自治体もあるため、調べてみるのもいいでしょう。
参考:東京都江東区「遊具の点検と砂場の汚染対策について」
砂遊びに使う遊び着を用意する
砂遊びをして帰ってくると気づけば家の中が砂だらけ、お気に入りの服が泥だらけなってしまった、という経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
子どもを遊ばせながら、洗濯や掃除の心配をしたくはないですよね。
一方で子どもにしても「服を汚さないでね」なんて言われていたら、思いっきり遊ぶことができません。
砂場遊びをする際は、汚れてもいい遊び着を何着か用意しておきましょう。
スモックタイプのものや、ロンパースタイプの砂場着も販売されています。
撥水加工のものを選べば、泥汚れも気にせずに思いっきり遊ばせることができますね。
砂や泥を触った手はよく洗う
砂場で遊んだ後は、よく手を洗うことを心がけましょう。
砂の中には様々な菌が存在しており、大腸菌類も潜んでいます(※)。汚れた手をそのまま口に運んでしまうと、おなかを壊してしまう可能性もあります。
※参考:千葉県衛生研究所「蒸気による砂場の消毒と細菌叢の変化について」
水場がある公園であれば、遊んだ後すぐに手を洗うことができますね。
公園で洗えない場合は、ウエットティッシュやハンカチで拭き、帰宅後すぐに石鹸で洗いましょう。
砂場遊びの発祥は?
日本の砂場遊びは、1885年のアメリカ・ボストンにルーツがあります。
当時のアメリカでは、スラム街での子どもたちを取り巻く環境が問題となっていました。
貧しさや暴力に囲まれて生活せざるを得ない状況にいるスラム街の子どもたちを危険から守り、安心して過ごせる居場所として取り入れられたのが砂場です。
スラム街で監督者付きの砂場が設置されると、居場所がなく不健康な生活を送っていた子どもたちが砂場に集まりだし、安心できる空間でのびのびと遊べるようになったそうです。
スラム街の子どもたちが砂場遊びを通して満足感を得て、生き生きとしだしたことで、砂場はアメリカ各地に広がっていきました。
その後1900年頃には日本にも伝わって幼稚園に砂場が設置されるようになり、昭和初期には今のように公園に砂場が見られるようになりました。
それまで日本の幼児教育で行われていた遊びは、堅苦しく大人主導で行うものが中心でしたが、砂場遊びは子どもが自由に想像して遊ぶことができます。
子どもが主体的に取り組み、自由に想像することができる場として日本でも広がり、今日のように砂場遊びが身近な存在となったのです。
今では見慣れた光景ですが、日本の子どもが砂場で遊ぶようになったのは、この100年ほどのことなんですね。
参考:同志社女子大学 笠間浩幸教授「遊びの力」
砂場遊びで手指に刺激を!そして想像力もぐんと豊かにしよう!
砂場遊びは衛生的に良くないといったイメージを持っている人もいますが、本文で取り上げたように、各自治体では砂場の汚染対策な様々な施策をおこなっています。
どうしても衛生面が気になる方は、柵が付いていて、散歩中の犬猫が入ってこないような砂場を利用すると、子どもを満足に遊ばせてあげられるはずです。
子どもに砂場遊びを思う存分させて、集中力や忍耐力、想像力など多くの力をぐんと伸ばしてあげましょう。