幼児期の子どもは記憶力がとても高く、いろんなことを吸収してどんどん成長していきますよね。
読み書きを教えるなら、最初はひらがなから始めるのがほとんどですが、中には幼児期からの「漢字学習」を勧めている教育法があります。
いきなり子どもに漢字を学ばせるのは難しいようなイメージもありますが、実際のところ、どちらを先に学んだほうが良いのでしょうか。
今回は、幼児期の漢字学習について、その効果や理論、教え方について紹介します。
幼児期はひらがなよりも漢字学習がいいって本当?
大人からすると、ひらがなと漢字のどちらが簡単かと言えば、誰でも「ひらがな」と答えるでしょう。
ただ、幼児期の子どもにとっては、ひらがなよりも漢字を先に学習したほうが覚えやすいとする教育法として「石井式漢字教育」があります。
石井式漢字教育の概要やその考え方、効果をまとめました。
石井式漢字教育では、漢字はひらがなよりも覚えやすいとされている
石井式漢字教育とは、教育者・石井勲氏の教育経験から生まれた教育法です。
石井氏は、幼児期の言語教育について次のように述べています。
幼児期の言語教育こそが人間の知能を決定する働きをし、能力を大きく飛躍させる鍵となる
(引用:石井式漢字教育)
つまり、幼児期に身に付ける能力の中で特に「言葉の能力」に注目しました。
その石井氏は、幼児期における言語教育で先に始めるべきは、ひらがなではなく漢字だと主張しています。
なぜなら、漢字はひらがなに比べて「目で見て理解しやすい視覚言語」だからです。
例えば、「花」という漢字を目にしたとき、頭の中に花を思い浮かべることができますよね。
しかし、ひらがなで「はな」という文字を見たときは花か鼻、もしくは違う「はな」なのか、なかなかイメージができません。
ひらがなに比べて漢字はイメージがしやすく、子どもにとって覚えやすいというわけです。
0歳から3歳は漢字の音や形を丸暗記できてしまうほど記憶力が高い
幼児期の0~3歳は、興味さえあれば丸暗記できてしまうほどの高い記憶力をもっています。
特に漢字は、異なる形や音の組み合わせによって意味を表していることや複雑な形から、子どもの興味関心を引きやすく、簡単に覚えることができるのです。
しかし3歳以降、丸暗記できる能力は減少し、代わりに8歳程度になると、論理的に理解して認識していく能力が上がってくると言われています。
この丸暗記できる力と論理的に理解する力は無関係ではありません。
幼児期に丸暗記できる能力を鍛えた子どもほど、より論理的に考え理解することができるようになり、優秀な子に育つと石井氏は分析しています。
参考:石井式漢字教育公式
知識の吸収には聴覚よりも視覚のほうが大きな役割を果たしている
脳の研究結果からは、聴覚よりも視覚の方が知識の吸収に大きな役割を果たしていることが分かっていいます。
研究によると、知識を吸収する上で耳の役割は11%ですが、目は83%も占めているそうです。
目で見て学習することがいかに大切なのかが分かりますね。
幼児期の漢字教育に使える教材には何がある?
では、家庭で漢字教育を実践するにはどういった方法があるのでしょうか。簡単に漢字教育に取り組める教材をご紹介します。
漢字学習アプリ
アプリのメリットは、スマホやタブレットがあれば場所を気にせず取り組めるところですよね。
本が増えるのが嫌だ、という方にもおすすめです。
無料のアプリもあるので、試しにやってみるのもいいでしょう。
「一年生!はじめての漢字の学習(読み)「かんじのトライ」 」
小学校1年生で学習する80の漢字を学べるアプリです。
子どもが漢字に興味を持つことを考えてつくられており、読み問題に特化しているので取り組みやすくなっています。無料なので、初めての漢字学習におすすめです。
パ・リーグ 漢字ストラックアウト
ストラックアウトゲームで楽しく漢字を学べます。
小学校で習う1000以上もの漢字を取り扱っていて、学習レベルに合わせて楽しむことができます。
間違えた問題のみを再チャレンジできる「とっくん」モードがあり、繰り返し学習も可能です。
漢字学習プリントやドリル
幼児期向けの漢字学習プリントやドリルも出版されています。
紙の教材であれば子どもが自らページをめくったり書き込むこともできるので、自宅でじっくりと漢字学習をしたい場合におすすめです。
「絵でおぼえるかんじシリーズ」
水王舎が出版している2~6歳向けのドリルです。
動物や天気など身近な漢字を取り入れており、イラストもかわいいです。
シリーズで出版されているので、1冊終わったら次のドリルにレベルアップできます。
「徹底反復 漢字プリント」
学年ごとに習う漢字を短い例文と共に学習できます。
45万部を売り上げている影山メゾットの人気ドリルです。
1~6年生までの漢字を取り扱っているので、低学年の漢字では物足りなくなった時にやってみると良いでしょう。
100均一で買えるダイソーの「小学生のドリルシリーズ」
ダイソーでも1~6年生までの学習ドリルを取り扱っています。
幼児期だと紙をぐちゃぐちゃにしてしまう場合もありますよね。
そんなときダイソーのドリルであればストレスなく子どもが手取って学習できます。
1冊80ページとボリュームもあり、楽しみながら学べる工夫もされています。
くもんの漢字カード
漢字カード1集は、0歳から学べるカードです。
親しみやすい40のことばが漢字とイラストで紹介されており、文字への興味・関心を促すようにつくられています。
くもんに通わなくても、教材だけ購入することが可能です。
子どもに漢字を定着させるための教え方は?
せっかく漢字学習を取り入れるならば、漢字をしっかりと覚えてほしいですよね。
実際に漢字学習に取り組む際、より有効な学び方をご紹介します。
絵と漢字がセットになったカードを繰り返し使う
幼児期の漢字学習は、漢字単体ではなく絵や写真のイメージと合わせて学習することを心がけましょう。
特に、カードタイプでの学習がおすすめです。
カードには文字とイメージ以外の余計な情報がないので、漢字とイメージが直結しやすくなります。
カードゲームをしているような感覚で漢字を学べる点もうれしいですね。
ドリルに比べて持ち運びもしやすく、外出時にも活用できるので反復練習にも便利です。
ちなみに、幼児期は丸暗記で知識を吸収できる時期ではありますが、いくら記憶力がよくても一回きりでは定着しません。
何度も繰り返し学習をすることで覚え、よりしっかりと記憶されていきます。
せっかく漢字学習を取り入れるのであれば、何度も繰り返し学習できるようにしましょう。
意味を掴みやすい漢字から始める
漢字の楽しさを知ることが、漢字学習の第一歩です。
そのためには、子どもにとって身近でイメージしやすい漢字から始めましょう。しかし大人にとって簡単な漢字だから子どももイメージがしやすい、というわけではありません。
例えば、「鳥」という漢字は大人にとっては簡単ですが、「鳥」という漢字は鳩や鶏、雀や烏も指す抽象的な漢字です。
大人はこれまでの経験から、羽がある・足が2本であるなどの共通点を見つけて、「これは鳥だ」と理解することができます。
ただ、子どもにとって実体のない漢字は具体的なイメージがしにくく、覚えにくいようです。
逆に画数が多く難しく思える「鳩」という漢字の方が、子どもにとっては簡単にイメージができます。
漢字がイメージしているものが興味のあるものであれば複雑であっても覚えてしまう、それが幼児期の記憶力の特徴です。
子どもが興味をもって楽しんで学習できるようにサポートしよう
石井式漢字教育の概要やその理論、漢字学習におすすめの教材や定着させる学習法について解説してきました。
幼児期は大人が思っている以上に、あらゆる知識を吸収する時期です。
だからといって、漢字や英語、プログラミングなどありとあらゆる知識を学習させようとしても、本人の興味が無ければ定着しませんし、学ぶ意欲も失われます。
学習を押し付けず、子どもが興味をもって学習できるようにサポートするのがそばにいる大人の役割です。
カードやアプリ、ドリルなどから子どもに合った教材を使って、楽しみながら漢字学習を取り入れていきましょう。
参考文献:石井勲『石井方式漢字の教え方 3歳児からの指導法』(学燈社, 1970)
参考サイト:石井式漢字教育公式