グローバル化が進む現代、「子どもに外国語を学ばせたい」、「バイリンガルにするにはどうしたらいいの?」と考えている保護者の方は多いのではないでしょうか。
今回は外国語を習得する教育法のひとつである、「イマージョン教育」をご紹介します。
イマージョン教育とは?
イマージョン(immersion)を日本語に直訳すると、「浸すこと」という意味です。
イマージョン教育では、外国語だらけの環境の中に子どもたちを浸して、いわば外国語漬けにします。
子どもたちはまるで母国語のように、外国語に囲まれて学校生活を送るわけです。
ここでいう外国語とは英語に限りません。フランス語やスペイン語など母国語以外の言語であれば、イマージョン教育とされます。
外国語(英語)を手段として、算数や理科など他の科目を学習すること
例えば通常の小学校では、算数の授業の際は日本語で授業を受けていますね。
しかし、イマージョン教育では、教科書や先生の説明、子どもたちと先生のやりとりまで基本的に外国語にて行われます。
まるで外国語を母国語のように、日常的に手段として使うことによって、自然とその言語を習得させる教育法が使われています。
日本では静岡の加藤学園で本格的に導入された
イマージョン教育の始まりは、1960年代のカナダですが、日本での取り組みは約30年前に遡り、1992年に加藤学園が初めて本格導入しました。
その取り組みは現在も続いており、実際に中学校・高校のバリンガルコースの生徒たちは生活の50%以上を英語の中で過ごしています。
参考:加藤学園公式サイト
イマージョン教育に効果やメリットはあるの?
では、従来の外国語学習とイマージョン教育とで効果を比較すると、どのような違いがあるのでしょうか。
イマージョン教育だからこそ得られる効果やメリットを、具体的に紹介します。
ネイティブ並みの英語力が身に付きやすい
例えば、ぐんま国際アカデミーでは小学1年生から英語イマージョン教育に取り組んでいます。
小学6年生では英語でディベート、中学3年生ではTOEICのスコア900点以上や、センター試験の英語科目でほぼ満点を取るなど、高い英語能力が示されています。
日本の伝統文化や歴史に対する理解が深まる
将来的に海外で活躍できる人材を目指すなら、母国の文化や歴史を知り、理解することが重要です。
例えば、相模原市のLCA国際小学校では、日本の古典や伝統文化に触れる時間を大切にしています。
国語の授業は日本語の教科書を使用。作文などの「日本語で表現する力」を育てることにも注力しています。
外国語に囲まれた生活だからといって、日本語や日本の歴史を疎かにはしないことで、多様性を認められる価値観を育むことが可能です。
イマージョン教育のデメリットは?
ここまでイマージョン教育の効果を紹介してきましたが、「外国語ばかりの環境で日本語を習得できるのだろうか?」と心配もあるでしょう。
ここで、イマージョン教育において懸念されるデメリットを紹介します。
中途半端になるとむしろ逆効果になる
言語の習得は、簡単なものではありません。母国語である日本語でさえ、幼少期から小学校、中学校、高校と積み重ねて習得しているものです。
しかしイマージョン教育の場合は、外国語を使用する頻度が高く、どうしても母国語を使う機会が減ってしまいます。
それを理解した上で、日本語の読み書きや日本語での思考能力もサポートできる環境が必要です。
イマージョン教育を行っている学校へ進学を希望する場合は、母国語の取り扱いやサポートを行っているかどうかを見極めることも重要でしょう。
学費が高く家庭の負担が大きい
イマージョン教育を本格的に導入しているのは、私立校のみです。(2020年現在)
公立校でも一部の科目で実験的に取り入れる学校もありますが、完全イマージョン教育の学校を選ぶならば、私立校以外の選択肢がありません。
私立校の場合、入学金だけで100万円ほど掛かることもあります。
イマージョン教育を行うための教材費や教員の確保にかかる費用を考えると、月々の学費も自然と高くなるでしょう。
学費は継続して掛かり続けるものなので、無理のない範囲のものなのか、慎重に考える必要があります。
家庭ではどんなサポートをしたらいいの?
イマージョン教育の学校に通学させればそれでいい、というわけではありません。
家庭でも何かしらのサポートが必要になります。
では実際、どのようなサポートをしたら良いのでしょうか。
外国語と日本語の本をバランスよく読ませる
イマージョン教育の場合、学校での使用言語の大半は外国語です。しかし外国語が身に付くからといって、日本語の習得を疎かにはできません。
そのため、家庭は日本語を使う貴重な実践の場となります。
会話でのコミュニケーションはもちろん、本を読むことも日本語の能力を高めるのに効果的でしょう。
家庭では日本語の本を読む習慣を付けるなどして、日本語に触れる機会を積極的に設けることをおすすめします。
なお、話すことに重きを置いた学校に通っている場合は、「読む力」を付けるために、日本語で書かれた本だけでなく、洋書を読むことも大切です。
子どものやる気を引き出す
どんなに学べる環境が整っていても、最終的に子どもが学ぶことに興味がない場合は成長に結びつきません。
特にイマージョン教育の場合、母国語での学びと比較すると各科目を学ぶハードルが高くなりがちです。
いかに子どもに興味を持たせ、やる気を引き出せるかを考え、サポートしていく必要があるでしょう。
校外で外国語を使った成功体験をつくるなど、子どもが学ぶことに喜びを感じられる機会作りも効果的です。
イマージョン教育を考えるなら家庭でのサポートは必須
イマージョン教育の概要やメリット・デメリットについて紹介してきました。
イマージョン教育は、外国語を身に付けるのに効果的な手法です。
「外国語を日本にいながら身に付けさせたい」と考える家庭は、一度検討してみるといいでしょう。
ただ、イマージョン教育を行っている学校数がそう多くないこと、私立校が多く学費が高いことなど課題も多いです。
さらに、家庭では日本語習得のサポートなども重要となるので、本当に自分の家庭に合った教育法なのかをしっかりと検討するようにしましょう。